農場全体を微生物環境として考える
酪農の衛生管理では、これまで「いかに悪い微生物を減らすか」という考え方が中心だったと思います。
洗浄して、消毒して、殺菌する。
もちろん、これは非常に重要です。
特に搾乳機器や乳頭など、食品衛生や乳房炎予防に直接関わる場所では、適切な洗浄・消毒は欠かせません。
しかし、消毒や殺菌をすると、悪い微生物だけでなく、そこに存在しているさまざまな微生物も一緒に減ってしまいます。
そして、きれいになった場所には、時間が経つと、再び微生物が入ってきます。
牛、糞尿、敷料、土、空気、人、長靴など、牛舎には微生物が入ってくる経路が無数にあります。
つまり、「悪い微生物を殺す」だけでは、いつまでもいたちごっこになるのではないか?という疑問です。
そこで考えてみたいのが、「加菌」という考え方です。
普段は「微生物」と表現しますが、「良い方向に働く微生物を加える」という意味で、あえて今回は、わかりやすく「加菌」とします。
▼前回の記事はこちら
水本牧場ブログ50:これからも、日本で安心して牛乳を飲める未来のために
INDEX ➖
1. 消毒は「リセット」、加菌は「環境づくり」
消毒・殺菌は、環境中の微生物を大きく減らします。
言い換えれば、一度、環境をリセットする作業です。
では、その後に空いた場所には、誰に住んでもらうのでしょうか。
ここで「加菌」という発想が出てきます。
先に望ましい微生物が存在していれば、後から入ってきた微生物と、栄養や場所、水分などをめぐる競争が起こります。
望ましい微生物が優勢な環境をつくることで、病原性微生物が増殖・定着しにくくなる可能性があります。
つまり、「悪い微生物を殺す」だけではなく、
「悪い微生物が増えにくい環境を先につくる」
という考え方です。
2. 10:10から、10:1,000、10:1億へ
これをイメージしやすい数字で考えてみます。
例えば、悪い微生物が「10」、良い微生物も「10」なら、まだ同じです。
それが、10:1,000になったらどうでしょう。
さらに、10:1億になったらどうでしょうか。
もちろん、実際の微生物環境は単純な「数の勝負」ではありません。
菌の種類、増殖速度、栄養、温度、pH、水分、酸素、付着能力など、さまざまな条件が関係します。
「良い微生物を増やす」というよりも、「望ましい微生物群集が形成され、病原性微生物が増殖・定着しにくい環境をつくる」という考え方です。
10:10から10:1,000へ。
10:1,000から10:1億へ。
「良い微生物で環境を埋めていく」という発想です。
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水本牧場ブログ10:生菌剤による微生物利用
3. 散布するだけではない「加菌」
そして、この考え方をさらに広げていくと、良い微生物環境をつくるために、牛舎へ微生物製品を散布するだけでいいのだろうかとなります。
農場には、さまざまな「微生物の入口」があります。
例えば、牛床や敷料には、望ましい微生物環境をつくるための散布。
さらに、牛そのものについても、飼料などを通じて腸内の微生物環境に働きかけるという考え方があります。
牛の腸管を通って排出される糞尿も、大量の微生物が関係する場所です。ここでも、望ましい発酵・分解環境をつくるという発想が考えられます。
そして、農場で働く人間も微生物と共存しています。
人については、プロバイオティクスなどによって腸内微生物環境を整えるという考え方もあります。
つまり、「牛舎に微生物を撒く」だけではなく、農場全体を一つの微生物環境として考えるということです。
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4. 牛から全体をつなげて考える
草→牛→糞尿→牛床、敷料→堆肥、土壌
このように、つながっています。
だからこそ、「農場全体として、どのような微生物環境をつくるのか」という視点があってもいいのではないでしょうか。
もちろん、すべての場所に同じ微生物を入れればよいわけではありません。
搾乳機器や乳頭、食品に直接関係する場所では、従来の洗浄・消毒を含めた衛生管理が重要です。
一方で、牛床、敷料、糞尿処理など、微生物が存在することを前提として管理する場所では、「どんな微生物環境をつくるか」という視点を、もっと取り入れてもよいのではないかと思います。
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5. 消毒と加菌は対立しない
「加菌をするから消毒はいらない」という話ではありません。
むしろ、洗浄 → 消毒・殺菌 → 加菌 → 定着 → 維持という組み合わせです。
消毒は、「微生物を減らす技術」
加菌は、「微生物環境をつくる技術」
と考えることができます。
従来の衛生管理が「微生物を殺す」ことを中心としてきたとすれば、これからは、「どんな微生物環境をつくるのか」を、考えると良いと思います。
つまり、「殺菌」から「微生物環境の管理」へ、という発想です。
もちろん、どんな微生物でも撒けばいいわけではありません。
どの微生物を使うのか。どこに使うのか。どのくらいの量なのか。どのくらいの頻度なのか。
給与する場合には、どの製品・菌株・方法が適切なのか。
消毒とどう組み合わせるのか。
本当に病原性微生物の増殖を抑えられるのか。
これらは、現場と研究の両方から検証していく必要があります。
消毒でリセットし、加菌で環境をつくる。
「悪い微生物を減らす」だけではなく、「望ましい微生物環境をつくる」。
これもまた、これからの酪農衛生を考える上での、一つの選択肢になるのではないかと思います。
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イージーベッド プロ発売:畜舎の微生物バランスを改善し、動物の健康維持に貢献(Lallemand Animal Nutrition)
ビタコーゲンとは|発酵生成物ビタコーゲンの株式会社セイワ
株式会社 iDECOM
液体有機肥料 MOOCAL-700 販売|土壌菌で土づくり|北海道標茶町 soil
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