酪農役立ちコラム

酪農現場ノート「チモシーの再生に必要な条件」

JOURNAL 2026.08.28

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

こんにちは!7月までの十勝は低温で、なかなか草丈が伸びなかった飼料用とうもろこしですが、やっと平年並になり、少しほっとしております。

さて、今回は、刈り高の違いによってチモシーの再生がどのように変わるのか、実際のほ場を観察して感じたことを共有したいと思います。

▼前回の記事はこちら
酪農現場ノート「どうすれば牛舎の中が涼しくなる?」

「適正な刈り高」に着目した理由

 昨年の夏、北海道でも30℃を超える暑さと雨不足が発生しました。寒冷地に適した草種であるチモシーは大きなダメージを受け、休眠または枯死してしまい、雑草やマメ科牧草が繁茂したほ場が多く見られました。そのため、暑さに強い草種への変更やチモシー割合を維持させる管理方法の見直しが行われています。その中で、今回注目しているのが「適正な刈り高」です。

チモシーは、地際から10cm以上の高さで刈ることが推奨されています。それ以下で刈ってしまうと、チモシーの栄養貯蔵庫である球茎部(下部の膨らんだ部分)を傷つけることや乾燥のリスクが高まり、その後の再生に影響を及ぼします。また、地際のゴミや土が刈り取った草に混入することで、酪酸発酵を助長してしまいます。と、教科書では習います。しかし、たった数cmでそんなに変わるものか?と疑問に思った私は、実際に様々な刈り高のほ場を見て回りました。

刈り高10cmと5cmで再生に差

 まず、刈り高10cmのほ場の刈り取り後約10日目の様子です(写真1、2)。

ほ場全体の様子(刈り高10cm)
株の様子(刈り高10cm)

写真1 ほ場全体の様子(刈り高10cm)  写真2 株の様子(刈り高10cm)

ほ場全体がすでに緑色を取り戻し、多くの新しい分げつが発生していることが分かります。

続いて、刈り高5cmのほ場の刈り取り後約10日目の様子です(写真3、4)。

ほ場全体の様子(刈り高5cm)
株の様子(刈り高5cm)

写真3 ほ場全体の様子(刈り高5cm)    写真4 株の様子(刈り高5cm)

刈り高10cmのほ場に比べて新しい分げつが少なく、ほ場全体もまだ茶色に見えます。

スタートダッシュの10日間でこれだけの差が生まれるのであれば、その後の収量も気になります。1番草収穫時の刈り高を変えた試験区で2番草の収量調査を行ったところ、刈り高5cmの区に比べて10cmの区では5.2%の増収となりました。また、刈り高5cmの区は、夏の気温が上昇している昨今、勢いの強いヒエなどの雑草の侵入を招き、草種構成の悪化による収量低下や粗飼料品質の悪化につながります。

予想外に良好だった、低い刈り高のほ場

 これらのほ場を見て、やはり刈り高を10cm以上に保つことはチモシーの再生に有利なのだと思った矢先、興味深いほ場に出会いました(写真5、6)。

ほ場全体の様子(刈り取り後約10日、刈り高5〜6cm)
株の様子(刈り取り後約10日、刈り高5〜6cm)

写真5 ほ場全体の様子(刈り取り後約10日)写真6 株の様子(刈り取り後約10日)

刈り高10cmの写真1、2に近い良好な再生をしています。ところが、このほ場の刈り高は5~6cmと推奨値よりも低いのです。

 なぜ、低い刈り高にも関わらずこのような順調な再生になるのか。私は改めて、「刈り高を10cm以上にする意味」を考えました。

刈り高10cm以上が持つ本当の意味

 刈り高を10cm以上にするメリットのひとつは、「牧草の再生に重要な球茎部を守ること」です。これを大きく分けると、①刈り取り時の外傷から守ること②乾燥から守ることのふたつだと考えます。このうち、「乾燥から守る」という点では、刈り高を確保して地上部を残すことで、上からの乾燥から球茎部を守ることが出来ます。しかし、乾燥の影響は上からだけではありません。根が十分に伸び、水分を吸収できる環境を整えることで、いわば「下からの乾燥」を防ぐことが出来るのではないかと考えました。

 写真5、6のほ場は、地区の中でも土壌が非常に柔らかいほ場です。土壌を踏み固めてしまう恐れのある大型機械が入らないことが大きな要因であり、根から水分が豊富に吸収できる環境です。そのため、上からの乾燥によるリスクを低減できたのではと考えます。そうなると、土壌を柔らかくするなどの「根が元気に伸びる環境」を作ることも、球根を守るアプローチとして必要だと考えます。

 前段に書いた通り、刈り高10cm以上のメリットは多数あるため、チモシーの永続性維持や粗飼料品質の向上には必要不可欠です。一方で、刈り高だけでなく、根からのアプローチも踏まえて「球根を守る」ことが、降水量の減っている昨今では必要だと考えます。

 写真5、6のほ場の農家さんは、このような気づきを面白がってくれる方です。2番草の収穫作業が終わったらぜひこの気づきを共有し、草地づくりの考えやこの地域で使えそうなアイデアを吸収できたらと思います。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

十勝農業改良普及センター十勝南部支所で農業改良普及員として活躍中。
兵庫県神戸市生まれ。酪農に興味を持ち、大学進学を機に北海道へ。大学卒業後、十勝農業改良普及センターに就職。現在は酪農の面白さにはまり、牛漬けの日々を送っている。現場をより良くできる普及員となれるよう奮闘中。

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