「らくコネ」第1回目から寄稿の機会をいただき光栄に存じます。まずは自己紹介から。栃木県で寺内動物病院という診療所を営んでいる寺内宏光と申します。乳牛と肉牛、ときどきヤギと養殖魚も診ています。
栃木県は北海道に次ぐ乳牛の飼養頭数を抱え、肉牛の飼養頭数も全国有数という畜産県です。仲間が多いのは良いことで、この厳しい情勢のなかでも積極的に情報交換をして生き抜いておられるたくましい農家さんが多くいます。私も微力ながら皆さんのお役に立ちたく、知識と技術と出せるものを全部出しながら走り回っています。
産業動物獣医師は家畜がいなければ仕事がありませんから、一つでも多くの牧場が未来につながっていくよう、インターネットラジオで全国へ、牛に関するお役立ち情報を発信しています。それは「らくちっくラジオ」というポッドキャスト番組で、毎週月曜に無料で配信しています。かれこれもうすぐ3年になり、「聞いているよ!」という嬉しい声もいただくようになりました。本気で有益な情報を提供しているので、まだ聞いたことのない方は作業中や運転中のお供にお耳をお貸しください。
過去の配信で人気が高いのは、「子牛の健康管理」について半年以上話し続けたシリーズです。子牛の健康は生まれる前に決まるところが大きいので、乾乳管理の話題にかなりの時間を割きました。
親牛の乾物摂取量を制限しないことと、ストレスをなるべく減らすことが大切なのですが、単純なようで、これができているかどうかが子牛の健康に大きく影響し、ひいてはその子牛の将来の繁殖性や産乳成績にまで関わってきます。つまりは、乾乳期管理が牧場の未来の収益性に直結するということです。
それをわかりやすく表現しているのが図のDOHaD学説です。たとえ遺伝能力が高くても、そのポテンシャルが引き出せるかどうかは胎子期から影響を受け、成長するほど取り返せなくなっていきます。
分娩前の管理が哺乳期の健康から将来の生産性まで影響することを酪農家に対しても和牛繁殖農家に対しても啓蒙し続けてきて、死んでしまうような子牛は減りました。それでもまったく下痢をしないというわけにはなかなかいかないので、分娩環境やワクチンなどの見直しから、獣医師いらずの牧場を増やすべく予防のアドバイスに注力しています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
寺内 宏光Hiromitsu Terauchi
北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表