Dairy Japan抜粋記事

乳牛の乳量を高める最新栄養管理|コーネル大学協定セミナー報告

JOURNAL 2026.08.03

Dairy Japan編集部

Dairy Japan編集部Dairy Japan Editorial Department

乳牛の乳量を高める最新栄養管理|コーネル大学協定セミナー報告
トム・オバートン教授

 デイリー・コンサルティング株式会社は、札幌市と東京で「コーネル大学協定セミナー」を開催しました。本セミナーでは、米国コーネル大学アニマルサイエンス学科長であり、酪農技術普及プログラム「Pro-Dairy」の責任者を務めるトム・オバートン教授が講演を行い、周産期栄養管理や米国酪農科学の最新研究について紹介しました。

 今回は、セミナーで紹介された中から、乳量向上や周産期管理に役立つポイントを解説します。

コーネル大学協定セミナーとは

 デイリー・コンサルティング株式会社は、コーネル大学との技術協定を通じて、米国の最新酪農技術や研究成果を日本の酪農現場へ発信しています。

 今回のセミナーでは、以下の2つをテーマに講演が行われました。

  • 周産期の栄養管理
  • 米国酪農科学の最新動向

 現場で実践できる最新の栄養管理や乳量向上に関する研究成果が数多く紹介されました。

潜在性低カルシウム血症が乳量に与える影響

 低カルシウム血症は、一般的に起立不能などの症状が現れる「顕在性低カルシウム血症」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし近年は、症状が現れない「潜在性低カルシウム血症」にも注目が集まっています。

 潜在性低カルシウム血症では、次のような悪影響が生じる可能性があります。

  • 乳量の低下
  • 乾物摂取量(DMI)の低下
  • 繁殖成績の悪化
  • 空胎期間の延長

 一見健康に見える牛でも、生産性が低下しているケースがあるため注意が必要です。

分娩後4日目のカルシウム濃度が重要

 講演では、分娩後のカルシウム濃度の推移を確認する重要性が紹介されました。

 正常な牛では分娩後1日目・4日目ともに血中カルシウム濃度は安定しています。一方、潜在性低カルシウム血症の牛では、分娩後1日目は問題がなくても、4日目にカルシウム濃度が低下する傾向が見受けられます。

 この変化は、その後の乳量や乾物摂取量にも影響するとされており、早期の状態把握が大切であることが紹介されました。

最新の低カルシウム血症対策

 低カルシウム血症を予防するための栄養管理は年々進歩しています。DCAD管理に加え、カルシウム給与やカルシウム吸着剤など、最新の研究成果を紹介します。

DCADコントロールによる管理

 低カルシウム血症対策として広く実施されているのが、乾乳期のDCAD(陽イオン・陰イオン差)の調整です。

 飼料中のミネラルバランスを陰イオン側へ調整することで、分娩後にカルシウムを利用しやすい状態を作り、低カルシウム血症の予防につなげます。その管理指標として、尿pHの測定が有効であり、適切な管理状態を確認しながら給与することが重要と説明されました。

飼料中カルシウム濃度を高める新たな研究

 今回紹介された最新研究では、DCAD調整に加えて、乾乳期の飼料中カルシウム濃度を従来より高める方法が紹介されました。飼料中カルシウム濃度を約1.5%まで高めた結果、分娩後の乾物摂取量(DMI)の改善、乳量の向上の効果が確認されたとのことです。

 また、DCAD調整を行う際には、効果が実証されている専用飼料を活用することも推奨されました。

カルシウム吸着剤を活用した新しいアプローチ

 さらに近年では、カルシウム吸着剤を利用する方法も研究されています。飼料中のカルシウム吸収を一時的に抑えることで、体内のカルシウム動員機能を活性化させる考え方です。

 カルシジオール(ビタミンDの循環前駆体)と組み合わせることで、低カルシウム血症対策だけでなく、乳量増加にもつながる可能性が示されました。

代謝蛋白(MP)とアミノ酸給与が乳量向上のポイント

 乳牛の生産性を維持するためには、十分な代謝蛋白(MP)の供給が重要です。
 講演では、分娩前のMP給与・必須アミノ酸給与が、特に初産牛のパフォーマンス向上に有効であることが紹介されました。

 さらに、分娩後もMPを十分に給与することで乳量増加につながることや、通常飼料へ戻した後も高い乳量を維持できた研究結果についても説明されました。

米国酪農の最新動向

 米国では栄養管理だけでなく、酪農経営にもさまざまな変化が起きています。Beef On Dairyの普及や乳成分の向上など、最新の酪農トレンドを紹介します。

Beef On Dairyが拡大

 米国では、酪農場で交雑種などの肉用牛を生産する「Beef On Dairy」が急速に普及しています。肉牛農場数の減少や交雑牛価格の上昇を背景に、酪農経営の新たな収益源として注目されています。

乳脂肪率・乳蛋白質率も向上

 米国では乳量だけでなく、乳脂肪率や乳蛋白質率も年々向上しています。
飼料管理や栄養技術の進歩によって乳成分が改善されており、乳業会社もこれに対応するため設備投資を積極的に進めていることが紹介されました。

CNCPS最新版の開発も進行

 講演では、コーネル大学で開発が進められている栄養設計プログラム「CNCPS」の最新版についても紹介されました。今後も、より精度の高い栄養管理が期待されています。

まとめ

コーネル大学協定セミナー

 今回のコーネル大学協定セミナーでは、周産期栄養管理や乳量向上に関する最新研究が数多く紹介されました。

特に印象的なポイントは以下のとおりです。

  • 潜在性低カルシウム血症は乳量や繁殖成績に大きく影響する。
  • DCAD管理に加え、飼料中カルシウム濃度の調整が注目されている。
  • カルシウム吸着剤を活用した新しい対策も研究が進んでいる。
  • MPやアミノ酸給与は乳量向上に有効である。
  • 米国ではBeef On Dairyや乳成分向上など、新たな技術・取り組みが進展している。

 デイリー・コンサルティング株式会社では、今後もコーネル大学との技術協定を通じて、国内の酪農現場に役立つ最新情報を発信していきます。

▼詳しいセミナー報告は『Dairy Japan2026年4月号』に掲載しています。
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