農業法人を後継者へ引き継ぐ際、株式の評価額によっては多額の相続税や贈与税が発生する場合があります。その税負担を大幅に軽減できる制度が「特例事業承継税制」です。
本記事では、制度の概要や対象となる法人、利用前に知っておきたい注意点を解説します。
『失敗したくない! 経営継承準備のヒケツ「Dairy Japan2025年11月号」』 筆者:小島 拓也(税理士法人 小島会計・代表)以下、要約。
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特例事業承継税制とは
特例事業承継税制とは、農業法人の株式を後継者へ承継する際に発生する相続税・贈与税の納税を猶予できる制度です。一定の要件を満たし続けることで、最終的には税金が免除される場合があります。
特例事業承継税制のメリット
特例事業承継には、以下の2つのメリットがあります。
メリット1:相続税・贈与税を大幅に軽減できる
株式評価額が高い法人でも、納税資金を準備せずに事業承継を進められます。
メリット2:経営権を後継者に集中できる
株式を後継者へ集約しやすくなり、承継後の経営が安定します。
制度を利用できる法人
対象となるのは、次の2つの法人になります。
- 株式会社
- 合同会社
一方で、農事組合法人は原則対象外です。ただし、株式会社へ組織変更することで利用できる場合があります。
制度利用で確認したい期限
特例事業承継税制を利用するためには期限があります。特例承継計画の提出期限は令和8年3月末、実際に贈与や相続による承継を完了する期限は令和9年12月末です。
また、承継方法によって適用条件が異なります。
| 承継方法 | 適用条件 |
| 贈与 | 期限内に株式を後継者へ移転 |
| 相続 | 令和9年12月末までに相続が発生している必要があり |
そのため、計画的に進めやすい贈与型を選択するケースが多く見られます。
猶予から免除までの流れ
特例事業承継税制では、株式を承継した時点で税金が免除されるわけではありません。まずは相続税や贈与税の納税が猶予され、その後も一定の条件を満たし続けることで最終的な免除につながります。
とくに重要なのが承継後5年間の「特例経営承継期間」です。この期間中は、後継者が代表取締役として経営を継続し、株式を保有し続ける必要があります。これらの要件を満たせなくなった場合は、猶予されていた税金の納付が必要になるケースがあります。
なお、「一定期間が経過すれば自動的に免除される」と誤解されることがありますが、実際には先代経営者の死亡や次世代への再承継など、制度上定められた条件を満たした場合に免除されます。
利用前に知っておきたい注意点
特例事業承継税制は税負担を大きく軽減できる制度ですが、利用にあたってはいくつか注意点があります。
まず、この制度は税金を直接免除するものではなく、「猶予」が前提です。そのため、後継者が代表を退任したり、農業経営をやめた場合には猶予が取り消される可能性があります。また、継続届出書の提出を忘れただけでも適用が取り消されるケースがあるため、制度利用後の管理も重要です。
さらに、株式を後継者へ集中させる必要があることから、ほかの相続人との調整が必要になる場合もあります。制度の適用期限も決まっているため、事業承継を検討している場合は早めに準備を進めることが大切です。
令和7年度税制改正で使いやすくなった
2025年度税制改正により、贈与時の役員就任要件が緩和されました。
従来は「3年以上前から役員」である必要がありましたが、現在は「贈与直前に役員であれば可」に変更されました。
まとめ
特例事業承継税制は、農業法人の事業承継時に発生する税負担を大幅に軽減できる制度です。ただし、確認すべきポイントも多いため注意が必要です。主な確認点は次のとおりです。
- 法人形態
- 承継方法
- 適用期限
- 継続要件
早い段階で税理士などの専門家へ相談することをお勧めします。
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