酪農役立ちコラム

ルミノブログ30:牛にしっかり風は当たっていますか

JOURNAL 2026.03.24

泉 賢一

泉 賢一Kenichi Izumi

3月中旬、北海道帯広市の学習会に招かれました。道路脇には除雪で積み上がった雪山が残り、朝は氷点下で道路も凍っていました。冬がなかなか去ろうとせず、最後までしがみついているような、そんな晩冬の景色でした。私が生まれ育った、この北国を離れて、まもなく1年になります。少ししんみりした気持ちになった、北海道の終わりかけの冬でした。

暑熱対策は、もはや標準装備

さて今回は、学習会のメインテーマでもあった暑熱対策についてご紹介します。

夏季の乳牛管理では、暑熱ストレスの軽減が生産性維持に重要であることは言うまでもありません。乳牛は高温環境下で体内に熱が溜まりやすく、暑熱の影響を受けると、
飼料摂取量の低下
呼吸数の増加
体温上昇
などが起こりやすくなります。体内に熱がたまりやすいのは、巨大な発酵タンクであるルーメンが、飼料の発酵熱を絶えず生み出しているためです。その結果、乳量の低下や繁殖成績の悪化、さらには健康状態への悪影響につながることは、皆さんもよくご存じの通りです。

 しかも近年は、夏の暑さが年々厳しくなり、その期間も長くなっています。一年の中で「夏」の占める比重は、確実に大きくなってきました。したがって暑熱対策は、単にその場しのぎで夏を乗りきるためのものではなく、年間を通して安定した乳生産を支える「標準装備」として位置づける必要があります。

基本の送風を抑えよう

牛舎内の暑熱対策として、まず重視したいのが送風です。送風は事業としても比較的導入しやすく、多くの現場で取り組みやすい方法です。牛体周囲の空気を動かすことで、体表面からの熱放散を促し、牛が受ける暑熱負荷をやわらげる効果が期待できます。とくに、風が停滞しやすい牛舎では、空気の流れをつくること自体に大きな意味があります。

 私の卒業生が経営する千葉県の牧場では、昨夏、送風機の増設によって乳量が前年比で大きく伸びました。散水やミストなど、ほかの冷却手法を取り入れる場合でも、送風はその効果を支える土台になります。

まずは牛にしっかり風を当てることが、暑熱対策の出発点といえるでしょう。

また、暑熱対策というと、どうしても日中の強い暑さへの対応に目が向きがちです。しかし実際には、気温が下がる時間帯の管理も大切です。日中に受けた暑熱負荷を翌日まで持ち越さないためには、夜間から早朝にかけて牛の体温をしっかり下げ、体に溜まった熱を十分に逃がせる環境を整える必要があります。夏場の牛舎管理では、暑い時間帯への対応だけでなく、涼しい時間帯に牛がしっかり回復できる条件をつくるという視点が欠かせません。

このように、送風を中心とした牛舎内の環境管理を一つずつ丁寧に積み重ねることが、暑熱ストレスの軽減と生産性維持につながると、私は考えています。

送風機で見過ごせないのは配電盤、火災予防のためににホコリが溜まらない工夫は大切です

皆さんの牧場では、牛の体に直接風が当たっているでしょうか。送風機やトンネル換気の風の流れには意外と死角が多いものです。夏を迎える前に、今一度確認してみてはいかがでしょうか。

PROFILE/ 筆者プロフィール

泉 賢一

泉 賢一Kenichi Izumi

1971年、札幌市のラーメン屋に産まれる。1浪の末、北大に入学。畜産学科で草から畜産物を生産する反芻動物のロマンに魅了される。修士修了後、十勝の酪農家で1年間実習し、酪農学園大学附属農場助手として採用される。ルミノロジー研究室の指導教員として学生教育と研究に取り組むかたわらで、酪農大牛群の栄養管理に携わる。2025年4月、27年間努めた酪農大を退職し、日本大学生物資源科学部に転職する。現在はアグリサイエンス学科畜産学研究室の教授。専門はルーメンを健康にする飼養管理。最近ハマっていることは料理と美しい弁当を作ること。

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