酪農経営では、牛の健康や乳量を安定させるために「一貫性のある管理」が重要です。
飼料管理では、毎日同じ品質のTMR(Total Mixed Ration)を給与することが基本となります。
牛は環境や飼料の変化に敏感な動物です。TMRの状態が日によって変わると、採食量や反芻活動に影響し、乳量や健康状態にも差が出る可能性があります。
この記事では、酪農現場で実践できる以下のポイントを解説します。
- TMRの適切な投入順序
- 添加剤を均一に混ぜる方法
- 粒度管理の確認方法
- 加水のタイミングと注意点
日々の作業を見直すことで、TMRの品質を安定させるヒントになります。
『Dairy Japan2026年3月号』現場技術シリーズ「エサ編:毎日同じTMRを」筆者:小山 真輝(明治飼糧株式会社・営業部営業推進グループ哺育育成・酪農シニアマイスター)以下、要約。
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TMRの投入順序|基本は「細かいものから」

TMRを調製する際の基本は、粒度の細かい飼料から投入することです。
一般的には次の順序で投入します。
- ビタミン・ミネラルなどの添加剤
- 配合飼料
- 粗飼料
細かい飼料を先に入れることで、ミキサー内で均一に混ざりやすくなります。
ただし、粗飼料の状態によっては順序を調整する必要があります。
粗飼料が細断されている場合
すでに10cm程度に細断されている粗飼料は、ミキサーで切断する必要がありません。そのため、粗飼料は後から投入するほうが適しています。
乾草やロールサイレージなど長い状態の粗飼料は、ミキサーである程度切断する必要があります。この場合は、粗飼料を先に投入してカッティングする方法が有効です。
なお、ミキサーは本来「混ぜるための機械」であり、長時間回すことを前提とした機械ではありません。ミキシング時間を必要以上に長くしないことが重要です。
添加剤を均一に混ぜるためのポイント

TMRには、ビタミンやミネラルなど、1頭当たり数g単位の添加剤を使用することがあります。こうした少量の添加剤は、そのまま投入すると均一に混ざりにくくなります。
そのため、次のような方法が効果的です。
添加剤を均一に混ぜる方法
- 複数の添加剤をバケツなどで事前に混ぜる
- できるだけ早い段階でミキサーに投入する
このように事前に混合することで、TMR全体への分散性が高まります。
また、ペレットタイプの配合飼料を使用する場合は注意が必要です。ミキシング時間が長すぎるとペレットが砕けて粉状になり、牛が特定の飼料だけを食べる「選び喰い」の原因になることがあります。
TMRの粒度管理はPSPSでチェック

TMRの均一性を確認するためには、PSPS(ペンステート・パーティクルセパレーター)を活用します。PSPSとは、TMRをふるいにかけて粒度の割合を確認するための器具です。粗飼料の長さや配合飼料の分布を確認することで、選び喰いのリスクを把握できます。
粒度が偏っている場合は、次の点を確認する必要があります。
- ミキシング時間が適切か
- 粗飼料の切断長が適切か
- 原料の状態が変わっていないか
粒度管理を定期的に行なうことで、TMRの品質を安定させられます。
加水は「最後に短時間で」行なう

TMRの均一性を高めるためには、適切な加水も重要です。
酪農現場でよくあるNG例と適切な加水方法は以下になります。
| よくあるNG例 | 適切な加水方法 |
| ・混ぜながら水を少しずつ加える ・長時間かけて加水する |
・ミキシングが終わった後に加水する ・できるだけ短時間で一気に加える |
また、寒冷地では冬季にTMRが凍る可能性があるため、水分量を少し減らして調整することも重要です。
TMRの品質を安定させる作業ルール
TMRの品質を安定させるためには、作業手順を統一することも重要です。
例えば、次のような項目を決めておくと作業のばらつきを防ぐことができます。
- 原料の投入順序
- ミキシング時間
- 作業開始時間
- 使用するミキサーの状態
また、TMRミキサーの刃を交換した場合は切れ味が変わるため、粗飼料の切断長が短くなりすぎないようミキシング時間を調整する必要があります。
まとめ
TMRの品質を安定させるためには、次のポイントを押さえることが重要です。
- 飼料は粒度の細かいものから投入する
- 添加剤は事前に混ぜて均一化する
- PSPSで粒度を定期的に確認する
- 加水はミキシング後に短時間で行なう
- 作業手順を統一する
日々の作業を少し見直すだけでも、TMRの品質は安定しやすくなります。牛の健康と生産性を守るために、飼料管理の基本を改めて確認してみてはいかがでしょうか。
▼詳しい実践方法は『Dairy Japan2026年3月号』に掲載しています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
Dairy Japan編集部Dairy Japan Editorial Department
酪農応援マガジン「Dairy Japan」編集部です。
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