こちら神奈川では、2月の中旬から梅が咲き、なんと早咲きの河津桜が見頃を迎えます。札幌では「雪まつり」が終わったばかりで、少しずつ高く積み上がった雪の山が溶け始めるかどうか、という時期なのにです。縦に長い日本列島の面白さですね。近所の犬の散歩道には、早咲きから晩生までさまざまな種類の桜が植えられている並木道があります。これからしばらくは目を和ませてくれそうです。
さて今回は、乳脂率の低下に関係する脂肪酸についての第二弾です。
飼料の脂肪酸についておさらい
はじめに前回のおさらいをしましょう。エサに含まれる油分の一部は、ルーメンの中で微生物によって変換され、その過程でトランス脂肪酸と呼ばれる物質が生じます。トランス脂肪酸には、健康なルーメン環境で生成される「t11 系」と、アシドーシス(SARA)条件下で生成される「t10系」の2系統があります。「t11系」トランス脂肪酸は、乳脂肪合成にとってほぼ悪影響はないですが、「t10系」は乳脂肪合成、とくにデノボ脂肪酸合成を強力に阻害するので、乳脂率低下を引き起こします。

これら2系統のトランス脂肪酸ですが、飼料中に油脂が多く含まれるほど、その生成量は増加します。フランスの研究チームは、普段から油脂を大量給与した牛のルーメン液を使って、トランス脂肪酸の生成を観察する興味深い実験を行いました(Zenedら, 2012)。
乳脂肪が低下する牧場としない牧場
彼らはルーメン微生物の「慣れ」と「アシドーシスの程度」がトランス脂肪酸の生成ルートをどう変えるのかを確かめるために、
・普通の飼料で飼った牛、
・SARAを起こしやすい高デンプン飼料の牛、
・高濃度の油脂を与えて馴致させた牛、
・そして油脂にも慣らしながらデンプンも多給してSARA条件とした高デンプン+高油脂の牛
から採ったルーメン液を使い、試験管内で5時間培養しました。培養基質は、基礎条件に加えてデンプンやリノール酸(油脂)、あるいはその両方を追加する条件を用意し、生成するトランス脂肪酸異性体(t11系とt10系)を比較しました。その結果、油脂に慣れたルーメン液ではリノール酸を加えても主にt11系(善玉)が増えましたが、高デンプンで酸性に傾いた条件では、とくに「デンプン+リノール酸」の組み合わせでt10系(悪玉)が大きく増加しました。つまり、油脂に慣れた牛で、健康なルーメンであれば善玉のt11系トランス脂肪酸が作られますが、ルーメンが酸性だとt10系ルートに切り替わることがわかりました。
同じ高油脂給与牧場でも、乳脂肪が低下する牧場と落ちない牧場に分かれる現象は、ルーメンがSARA状態かどうかに関係しているといえそうです。低pHのSARA状態になると、飼料に添加された油脂の行き先が善玉のt11系から、悪玉のt10系にシフトするというわけです。
現場では、油脂導入はゆっくり慣らし運転することと、同時にルーメンを酸性化させない設計が肝になりますね。

PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。




