酪農現場で欠かせないトラクター。しかし、過酷な環境下で酷使されるため、適切なメンテナンスを怠ると突然の故障や作業停止につながる恐れがあります。本記事では、ヤンマーアグリ株式会社の技術担当者が解説する「日常で実践できるメンテナンスの基礎」と「故障を防ぐためのチェックポイント」をまとめました。
『Dairy Japan 2025年11月号』現場技術シリーズ「間違いない道具の使い方」より
INDEX ➖
まず最初に必ず知っておきたいこと

取扱説明書は「最強のメンテナンス書」
メーカーが最も重要と伝えているのは、「取扱説明書を読むこと」です。
使用方法は理解していても、維持管理・点検項目・交換周期などは説明書に細かく記載されています。知らずに見落としているポイントがある場合も多く、故障を防ぐ第一歩です。
メンテナンスを怠ると起こる“あるある”トラブル

オイル・フィルターの放置
交換時期を超えて放置すると パワーダウン・始動不良・部品摩耗の原因になります。
とくにフィルターは定期交換が必須です。「気づいたらパワーが落ちている」などは珍しくありません。
冷却水不足によるオーバーヒート
ホコリが多い作業環境では冷却性能が低下しやすく、冷却水不足やフィルター目詰まりは即トラブルに直結します。酪農作業環境の特性上、ホコリが多く、さまざまな部分に詰まったり汚れたりすることから、冷却水温が上昇するリスクが高いため、注意が必要です。
メンテ不足により修理費が高額化するケースも
一定期間点検を怠るとエラー表示が出る機種もあり、対応せず放置すると突然停止し修理費が嵩む恐れがあります。担当者からは「早期点検で防げたケースも多い」との声もあります。
作業の前に必ずチェックしたい項目
作業前に確認したい項目は、以下になります。
| チェック項目 | 具体的な確認内容 | 理由 |
| エンジン周り | 漏れ・汚れ・異音の確認 | 早期異常発見につながる |
| オイル量 |
規定量を下回っていないか |
焼き付き・故障防止 |
| 冷却水 |
量・フィルターの目詰まり |
オーバーヒート防止 |
| ラジエータ網目 |
ゴミ・ホコリの詰まり |
冷却効率低下の回避 |
| ホース類 |
破損・摩耗・漏れの有無 |
走行・油圧系トラブル予防 |
| タイヤ空気圧 |
適正値かどうか |
走行安全性の確保 |
以下のメンテナンス内容も実施しておくと効果的です。
- フィルター/燃料水分分離装置の定期交換がお勧め。
- 後部ホース類の破損・漏れは定期的にチェックする。
- ボンネットの網目は目詰まりしやすいので清掃を。
久しぶりの使用前にやるべきこと(オフシーズン明け)

オフシーズンが明けて、久しぶりに作業をしようとしたら「何か調子が悪い」となってしまっては、これから始まる酪農作業を乗り越えられるか不安になるかと思います。
三つの点を確認して、作業を進めてください。
- バッテリー上がりの有無。
- 配線・ホースをネズミにかじられていないか。
- 劣化・ひび割れ・摩耗のチェック。
冬明けの北海道ではバッテリー上がりが多く、事前チェックだけで防げる故障は多いと言われています。
理想はオフシーズンにプロ整備へ

自分でできる点検には限界があります。
販売店での整備では外観では見えない機械の内部部品まで診断され、故障の芽を早期に発見できます。結果として、高額修理や買い替えリスクの低減につながるため、年1回の整備依頼がお勧めです。
まとめ
今回はトラクターを「安全に長持ちさせる使い方」を紹介しました。
トラクターに乗る前には、以下の五つのポイントを確認しましょう。
- メンテナンスの基本はまず説明書を読むこと。
- フィルター・オイル・冷却水はとくに重要。
- 乗る前の目視チェックで多くの故障を防げる。
- オフシーズンはプロ整備で内部まで点検を。
- 日々のケアがトラクター寿命を大きく伸ばす。
「最近パワーが落ちた」「異音がする」など小さな違和感は故障のサインかもしれません。
この記事をきっかけに、自分が普段、使用するトラクターを点検してみてください。
▼詳しい実践方法は『Dairy Japan 11月号』に掲載しています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
Dairy Japan編集部Dairy Japan Editorial Department
酪農応援マガジン「Dairy Japan」編集部です。
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