『Dairy Japan 2023年6月号』p.57「連載・酪農サポート日誌・18日目」より
今年も牧草(粗飼料)収穫・調製が気になる時期になりましたね。
近年、潜在能力が飛躍的に改良された乳牛にとって、粗飼料の重要性がますます高まっていると同時に、粗飼料の科学的知見も深まっています。
そこで、「粗飼料について」を小林悟さん(株式会社 丸勝・技術開発戦略室。以下、著者)が解説してくださいました。
冒頭でも触れましたが、粗飼料の品質によって酪農経営は大きく左右される、と著者は明言します。
そして、反芻動物は粗飼料をルーメンという、いわば発酵タンクを使って消化吸収することから、乳牛にとって粗飼料は、栄養であり反芻を促す材料である、と述べています。
●品質の良し悪し五つの―ポイント
著者は、粗飼料の品質の良し悪しは、以下の5点としています。
1 よく食べるか?
2 よく反芻するか?
3 可消化部分が多いか?
4 腐っていないか?
5 ミネラルのバランスが崩れていないか?
このなかから今回は、1と4について考察されました。
●よく反芻するか?
十分に反芻してルーメンが安定すると乳牛は健康になる、と著者は前置きして、食べた粗飼料がルーメンを刺激して反芻を促すことが重要としています。
その反芻を促す力は粗飼料の種類や切断長で左右され、反芻を促す指標は「peNDF」(物理的有効線維)です。アルファルファ乾草、チモシー乾草、オーツ乾草、ウィートストローのpeNDFを見ると、大きく違っています。
また、サイレージにした場合は切断長が反芻に影響を与えることから、草種や刈り取り時期、原料の水分によって切断長を変える必要がある、と著者は言います。
著者が勧める切断長は以下です。
■刈り遅れ・水分低め:切断長は短め9から11mm
■早刈り・水分高め:切断長は長め11から14mm
●腐っていないか?
サイレージが酪酸発酵してしまうと乳牛は食べなくなってしまい、食べる量が減って栄養をたくさん摂ることができなくなり、悪循環が始まる、と著者は述べています。
そして、酪酸発酵やカビの発生、不良発酵を予防するための、サイレージ調製の注意点を以下にまとめています。
1 原料の乾物調整(24から30%)
2 やむを得ず原料が高水分の場合はギ酸や乳酸菌を使用
3 土の混入を防ぐ
4 十分な鎮圧
5 バンカーサイロの断面積を大きくしすぎない
乳牛に、おいしい粗飼料を腹いっぱい食べさせて、たくさん反芻させること。そして、きちんと栄養のバランスを取ってあげることが乳牛の健康につながると著者はまとめています。
そして、皆さんが今年も事故なく、良質な粗飼料を収穫できることを祈っています、と締めくくっています。
※写真はイメージです。
PROFILE/ 筆者プロフィール
小川諒平Ryohei Ogawa
DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。