みんなのブログ

カナダに行ってきました! 【農場視察編】

JOURNAL 2025.06.26

寺内 宏光

寺内 宏光Hiromitsu Terauchi

 ラジオでも解説している、3月のカナダ渡航の報告です! 今回は農場視察の前編です。

◆カナダ酪農は家族経営主体で日本に近いかも

 カナダの酪農家は50頭から数百頭くらいの規模で、家族経営が主体です。米国ほど大規模化しておらず、長命性を重視しながら成績が非常に良い(高乳量・高乳成分・高受胎率・高収益)ので、個人的には日本が参考にするなら米国よりカナダのほうが良いように感じました。

 搾乳ロボットやゲノム検査の普及率も日本とそう変わらないようです。つまり、先端技術の差ではありません。なぜこんなに違うのか、三つの仮説を考えました。

①気候が酪農に適している。

②ある程度の淘汰が進んで今がある。

③酪農の「基本」に忠実である。

◆気候が違うとこんなに違う

 カナダは冷涼で乾燥しています。菌が繁殖しにくいので、飼料のカビや腐敗の心配が少ないようです。敷料もすぐ乾いて乳房炎が少なそうだし、哺乳瓶の洗浄は簡素でも子牛は下痢をしなさそうです。そのぶん、発酵しにくいので堆肥化は困難なようですが。

 広大な土地があるので、大麦サイレージを中心に、デントコーンサイレージ、菜種、アルファルファ、フェスクなど多くの飼料を自給しています。日照時間が短く、土地がやせていたので、昔は大麦くらいしか作れなかったのが、温暖化で自給飼料のバリエーションが豊かになったようです。しかし今でもたまに干ばつがあります。

 大麦はコーンとチモシーの間のような栄養分で、使い勝手が良さそうです。日本にも輸出されています。

◆生き残った農家と基本の大切さ

 カナダでは15年前から「Pro Action」という認証制度のようなものが推進されています。それは乳質、牛舎衛生、アニマルウェルフェアなどの細かな項目の改善が厳しく求められ、それにより離農した酪農家は少なくないそうです。

 さらに、クォータ制度により新規参入のハードルが極めて高いため、精鋭の酪農家が残っているのではないかと想像します。それだけに、視察先の農場は家族揃って酪農家であることに誇りを持っていたのが印象的でした。

 さらに、現在カナダは移民による人口増で生乳需要が高まっていて、カナダの酪農家は儲かっています。ゆえに当然、子ども達は後継者になりたがっていました。高収入は多くの問題を解決しますね。

◆基本があって創意工夫が活きる

 生き残った酪農家は何が違うのか。それは牛を大切に飼い、生産成績と向き合い、良質な生乳を出荷する、という基本の徹底でしょう。視察した優秀な酪農家は、さまざまな工夫はあれど、牛の観察とデータをとても大切にしていました。日本とカナダは、環境条件は違うけれど、「基本に忠実」という良い酪農家の共通点は見習う余地があると感じました。

 「らくちっくラジオ」はこちらからアクセスしてください。QRコードも貼りますので。お持ちのスマホの種類によってポッドキャストの視聴方法がちょっと変わります。読み取ってご確認ください。

この記事が面白かったらシェアしてください!

↓  ↓  ↓

PROFILE/ 筆者プロフィール

寺内 宏光

寺内 宏光Hiromitsu Terauchi

北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表

RELATED/ 関連記事

記事についてのお問い合わせ

error: クリックできません!