
『Dairy Japan 2024年8月号』P.25「初産分娩までが未来の経営を左右する No.6–育成牛の発育と環境要因–」より
育成牛は、あなたの農場の将来の牛群です。ですから育成管理の改善は、経営基盤の強化と言えます。
育成管理の改善に軸足を置いた「初産分娩までが未来の経営を左右する」と題したシリーズで、海田佳宏さん(株式会社 清流酪農サービス・代表)が詳しく解説してくださいました。
今回は、その6回目です。以下、抜粋・要約。
栄養や環境が増体に及ぼす影響
乳牛栄養要求『NASEM2021』では、環境温度が若齢子牛のエネルギー要求量に及ぼす影響を示しています。出生から3カ月齢では15℃、3カ月齢以上では5℃を下回るとエネルギー要求が増加しています。0℃ではエネルギー要求の増加ぶんが、それぞれ38%、18%と増えています。一方、暑さについては同様に、30℃でエネルギー要求量が1割ほど上がっています。暑熱に関しては、すべてのステージでストレスを受けることになります。
つまり、牛は寒さに強く暑さに弱いと言われますが、子牛や育成は寒さに弱く、搾乳牛や乾乳牛と同じく暑さにも弱いのです。
粗飼料の栄養価と増体
8カ月齢の育成牛が、良品質・低品質の粗飼料で育ったときの増体予測です。
良品質はCP13%・NDF58%の早刈り牧草です。低品質はCP9%・NDF70%の遅刈り牧草です。
結果は、良品質の増体が0.73kg/日に対し、低品質は0.51kg/日となりました。この差を実増体量に換算すると、1カ月で7kg弱、3カ月で21kg強です。3カ月給与すると約1カ月ぶんの増体差が生じることになります。
このように、粗飼料品質の差は増体に大きく影響しています。
環境温度と増体
上記の例で、良品質粗飼料を給飼したときに、環境温度の差が増体に及ぼす影響予測です。
環境温度が0℃、20℃、30℃の場合を比較してみます。20℃の増体と比較すると、0℃では3割程度減少します。寒冷期は維持要求ぶんが高まるためです。一方、30℃では20℃の増体と比較して84%となります。高温時には耐熱放散のため、発汗や呼吸数増加による維持の要求が高まるためです。
さらに、湿度が高まると高温時の増体は、さらに低下します。
また、寒冷時には乾物要求量が増えますが、暑熱時は逆に低下します。寒冷時と暑熱時の栄養対策は、乾物摂取量の違いを考慮する必要があるでしょう。
被毛の状態と増体
被毛の状態と増体との関係です。ここでの被毛の状態とは、四肢に汚れが見られる程度の衛生状態を前提にしています。
環境温度が20℃、30℃の場合は、被毛が汚れていても増体に影響はありません。しかし、環境温度が0℃の場合は、被毛が汚れている状態では、わずか0.1kg程度の増体となってしまいます。被毛が汚れていると、揮発熱の発生により体熱が奪われることで、寒冷ストレスを増加させるためです。
隙間風と増体
風と増体の関係です。風がある場合とは、隙間風がある状況や、風よけがない環境を意味しています。
被毛の状態が良く、0℃の場合の増体は0.54kg/日です。ここで、2m/秒の風を受けたとしたら、増体は0.25kg/日に激減します。さらに、被毛が汚れた状態では0g/日となり、まったく増体しません。
環境要因において「低温」「被毛の汚れ」「隙間風」は、育成牛の増体を阻害する3大要因なのです。
本稿(Dairy Japan 2024年8月号)では、さらに詳しく紹介されています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平Ryohei Ogawa
DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。