
らくちっくラジオの寺内です。
今回は、2025年4月1日に米国のCDCB(乳牛育種協議会)が行なった「Genetic Base Change(通称:ベースチェンジ)」について解説します。
難しそうに思えますが、これからの種雄牛選びに影響する大事な話なので、できるだけ噛み砕いてご紹介します。
ベースチェンジって何?
実は5年に一度、米国では乳牛の「評価の基準」をアップデートします。
つまり、「このくらいの能力が平均的」という牛の集団(基準群)を、最新世代に入れ替えて評価し直すのです。なぜかというと、遺伝的にどんどん良くなっているから。
今回は、基準となる集団が2015年生まれ→2020年生まれに更新されました。
昔の基準のままだと、今の牛のスゴさが正しく評価できなくなるんですね。
PTA値がちょっと下がった? でも大丈夫!
「PTA」(予測遺伝能力)とは、いわば「この牛の子どもはこれくらいの能力があるよ」という予想値です。
この評価値が、基準の変更により全体的に下がって見えるようになります。
でもこれは、牛の能力が落ちたわけではありません!
平均的な牛達の能力が上がったから、相対的に見て数字が下がるんです。
PTAの平均的な変動(ホルスタイン種)


NM$ の重み付けも変化!
「NM$」(ネットメリット)は、「どれだけお金を稼いでくれそうな牛か」という総合指標です。2025年の変更で、評価の中身も見直されました。
重み付けの変化のポイント
✔ 乳脂肪の重みが上がった
✔ 飼料効率(より少ないエサで育つ)の価値も上昇
✔ 生存率(在群期間)もアップ
✔ 妊娠率は少しダウン(ただし軽視されたわけではない)
→ 経済的重視ポイントが「乳量」から「乳脂肪」と「飼料効率」へ移行。長命性がより意識されるように。
重視される項目の変化から、種雄牛のランキングにも変動が起きています。
今回の変更で、見慣れた数値がガラッと変わったように見えるかもしれません。
でも焦らず、「何が評価されているのか」をしっかり見ていきましょう!
🔸「乳成分」で乳代が決まりやすい米国の基準なので、「乳量」で乳代が決まる日本は、「NM$」だけでなく、乳量基準の経済指標「FM$」(フルイドメリット)も参考にすべきかもしれません。
🔸まだ飼料費が高いので、「飼料効率」重視は良いことでしょう。
📚 参考文献・公式情報
- CDCB公式発表: Genetic Base Change 2025
- CDCBニュースリリース: April 2025 Genetic Evaluations
- The Bullvine解説記事: Historic Reset in April 2025
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PROFILE/ 筆者プロフィール

寺内 宏光Hiromitsu Terauchi
北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表