
『Dairy Japan 2024年6月号』P.53「初産分娩までが未来の経営を左右する No.4–育成牛の授精から分娩までの発育–」より
育成牛は、あなたの農場の将来の牛群です。ですから育成管理の改善は、経営基盤の強化と言えます。
育成管理の改善に軸足を置いた「初産分娩までが未来の経営を左右する」と題したシリーズで、海田佳宏さん(株式会社 清流酪農サービス・代表)が詳しく解説してくださいました。
今回は、その4回目です。以下、抜粋・要約。
妊娠後の発育
妊娠前の発育が停滞した場合、生殖器の成長が劣り、授精適期が遅延します。
妊娠後の増体が不十分だと、難産やその後の乳量低下、繁殖不良の原因となります。一方、過度に増体した場合は、分娩時の難産や代謝病が懸念されます。
摂取した栄養の利用優先順位
乳牛の飼養標準では、摂取した栄養を基準として、利用される生体活動に振り分けています。育成牛が摂取した栄養が利用される優先順位は、以下のとおりです。
1 維持
2 妊娠(受胎成立後)
3 成長
4 蓄積
5 繁殖(受胎成立前)
受胎前後で優先順位が変化する
受胎成立前においては、繁殖の優先順位が低いことに着目しましょう。受胎前の発育が停滞すると、繁殖機能の発育が停滞します。逆に言うと、十分な栄養供給なくして受胎を達成することはできないのです。
一方、妊娠の優先度は、成長よりも高くなっています。そのため、栄養要求が高くなる妊娠後期は、自身の成長よりも胎子に優先的に栄養が供給されます。とくに分娩2カ月前には、胎子の60%が成長するとされています。この時期の栄養不足は、母体の成長を停滞させてしまいます。結果的には、分娩時に不十分な体格となり、難産を誘発します。また、産後も母牛自身の成長が優先されるため、低乳量や繁殖不良が懸念されます。
逆に、栄養過剰の場合は、余分な体脂肪の蓄積により過肥となります。授精時期の過肥は、受胎率の低下による繁殖の遅延に影響します。また、過肥により子宮頸管に脂肪が蓄積し、産道が狭くなることで難産が起きやすくなります。さらに過肥は、本来初産では少ないはずのケトーシスや乳房炎を誘発し、疾病の発生率が高まります。コスト削減の視点からも、過剰給与の回避に留意したいところです。
本稿(Dairy Japan 2024年6月号)では、栄養改善の事例、育成時期の給与飼料内容の改善事例、育成施設の改良と発育の事例も、詳しく紹介されています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平Ryohei Ogawa
DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。