
北海道酪農検定検査協会は2月27日に「2024年度検定員中央研修会」を、28日に「2024年度検定情報活用研修会」を札幌市で開催しました。データ収集の効率化や検定情報の活用方法など、広く情報共有が行なわれました。
●PAGs検査を利用した繁殖管理
十勝管内大樹町の有限会社ミズノの水野穣治氏は、「人も牛も無理をしない」をモットーに、経産牛約220頭をフリ―ストール/パーラーで管理しています。労働力は水野氏夫妻と両親で、労力が極力かからない管理を心掛けています。そうした状況下で同牧場は、PAGs検査を用いることで繁殖成績向上と労力低減を実現しています。
PAGs検査とは、乳汁サンプルから特定の蛋白質を測定し、早期に妊娠判定を可能にする検査法です。
水野氏は授精後、乳検のタイミングでPAGs検査を実施し、マイナス判定の牛は獣医師に診てもらいます。プラス判定の牛でも未受胎の場合があるので、備考欄の数値が0.5を下回る牛は再検査、また授精後100日の牛もプラス判定であっても再検査します。乾乳期に入るまでに少なくとも2回検査することで、妊娠ミスがないようにしています。2018年からPAGs検査を導入し、2020年から検査数を増やし継続して行なっており、以来、分娩間隔が短縮したことから、早期に妊娠判断ができていることに効果を実感しています。また、定期的な繁殖検診の際に全頭を保定する必要がなくなり、作業負担が大幅に軽減されました。
今後さらに繁殖管理の精度を上げるために、乾乳期に入る段階でPAGs再検査を行ない漏れを減らす取り組みを検討しています。

水野穣治氏 検定員中央研修会にて
●獣医師による乳検データの活用
株式会社ノースベッツの中村聡志獣医師は、顧客農場の牛群改良を図りながら収益性を高めるなかで、不本意な淘汰や授精不能牛を極力減らし、牛群が適切に更新される理想的な「カウフロー」を維持することが経営向上につながると述べました。良いカウフロー実現のためには、疾病の減少や分娩頭数の確保などさまざまな要因がありますが、なかでも繁殖管理と移行期管理を良くすることが肝要だといいます。
移行期管理を改善するためのチェック項目として、フレッシュチェックによるモニタリングと、乳検データの数値から読み解く方法を活用しています。分娩後初回の乳検で「乳中BHB0.12%以上」「デノボ脂肪酸21%以下」「乳蛋白質率3.2%未満」の農場は妊娠率が低い傾向にあることがわかり、それらの数値を見ながら移行期管理の改善を検討しています。
また、それと並行して、移行期管理や繁殖管理などを底上げするには遺伝改良が効果的であるとしました。なかでも妊娠能力を表すDPRの数値を意識した遺伝改良は有効で、乳量や乳成分の向上と並行しながら繁殖成績向上に大きな影響を与えるといいます。また乳脂肪の数値を意識した改良も有効であり、乳量重視の改良に比べて能力上昇幅が大きくなった事例を紹介しました。
今後、遺伝改良により乳牛の能力がさらに向上することが見込まれ、それに伴い今までの常識が通じなくなることも考えられるため、数値やデータの見方を柔軟に変化させていく必要があると述べました。

中村聡志獣医師 検定情報活用研修会にて
PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。