『Dairy Japan』2024年9月号p.42「ルポ2」より
宮城県大崎市で経産牛120頭を飼養する株式会社エスエーシーは2021年3月に牛舎を新設。規模拡大したことにより経費が増えるなか、収益を確保するための取り組みを聞きました。
規模拡大の実現
株式会社エスエーシーの代表・関場渉太さん(30歳)は20歳で就農し、翌年に父から経営を継承。当時30頭規模の繋ぎ牛舎でしたが、家族と過ごせる時間の確保や効率的な経営を目指し、規模拡大を決意。2021年に畜産クラスター事業を活用し、120頭規模の繋ぎ牛舎を新設しました。当初は順調な経営を見込んでいましたが、情勢悪化により収益確保のための改善策が必要となりました。
子牛販売価格の向上
関場さんは和牛子牛の販売価格が高い宮城県市場に注目し、「宮城県の子牛市場相場は“うちの牛”だというイメージを作ること」を目標に、子牛の飼養管理を徹底的に見直しました。
乾乳牛は乾物摂取量が12kg/日以上になることを意識し、カリウム含量の低い購入チモシーを給与しています。これにより周産期病の予防を徹底。さらに肥育農家と頻繁に情報を共有し、理想的な出荷日齢や増体を逆算して計画を立てました。また、農場内でのスワブ検査や糞便検査を実施し、疾病管理を強化。
これらの取り組みの結果、市場での成績は平均を大きく上回り、2023年は12回中7回、2024年は7回中6回(取材当時)のトップセールを達成しました。
乳房炎コントロール
牛舎新設後、乳房炎コントロールにも注力しました。搾乳手順を見直し、乳頭刺激後1分20秒から1分40秒でミルカーを装着するルールを徹底しました。その結果、乳房炎発生率を従来の5、6%から1、2%に低下させ、治療費や薬剤費の削減に成功しました。
関場さんは「乳房炎牛もエサ代は同じ。減らせたことは経営面でも非常に大きい」と語ります。
コストカットへの取り組み
コスト削減において、関場さんは「数字に関わらない部分にはお金をかけない」という方針を徹底。具体的には、飼料庫を鉄骨ではなくビニールハウスで建設、敷地内の地面をコンクリートではなく砂利にするなど、無駄な出費を抑える工夫をしています。
一方で、エサや牛舎の快適性など、収益に直結する部分には積極的に投資を行なっています。
ゲノム評価で健康な牛群へ
今後の目標として、関場さんは「病気の少ない健康な牛群作り」を掲げています。その一環としてゲノム評価を取り入れ、乳量や繁殖性に加え、健康指数の高い牛を育てる改良を開始。宮城県酪農業協同組合と連携しながら、損失を減らし理想的な牛群を目指しています。
取り組みは始まったばかりですが、牧場のさらなる発展を見据えた活動を続けています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
小川諒平Ryohei Ogawa
DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。