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水本牧場ブログ10:生菌剤による微生物利用

JOURNAL 2024.10.16

 こんにちは。今回は私の牧場のキーポイントでもある微生物利用についてお話しします。

 はじめに、「生菌剤」とは、消化管内において作用する生きた微生物のことです。

 微生物とは、目に見えないくらい小さな生物のことで、細菌、菌類、ウイルス、微細藻類、原生動物などが含まれます。私の農場では牛、糞尿、土、環境などさまざまな場面で生菌剤を使い、微生物の利用を行なっています。

 最近は、牛で酪農を行なっていると言うより、微生物で酪農を行なっていると言っても過言ではないくらいです。

 「微生物を知ることが、酪農家としての成功への近道」だと考えています。そして
 「微生物を極める者は、酪農を極める」のだと思います。

微生物は多様性が重要

 微生物は、「多様性」が重要です。
 今の時代にもマッチした考え方だと思います。ここでは製品名は避けますが、各社さまざまな生菌剤を取り扱っています。
 自農場では、哺乳・育成・乾乳・搾乳の各ステージに合わせて、ルーメン、小腸、大腸、牛舎環境用の生菌剤を数種類、ミックスして使用しています。科学培養、自然培養によっても効果の持続性にも違いがあります。

 どれか一つを使うことも良いですが、良い微生物の量を増やすだけでなく、微生物の種類を増やすことによって、いろいろな効果を発揮してもらうことをオススメします。

微生物利用のおかげで、牛達はとてもリラックスしています

微生物利用はエサだけではない

 自農場では牛へのエサ給与だけでなく、環境に散布することもしています。その中で、牛床に撒く取り組みを紹介します。

 以前から私は石灰等を用いた消毒に疑問がありました。悪い微生物だけでなく良い微生物まで、死滅してしまうからです。

 7年くらい前に、悪い微生物を死滅させるという発想から、牛床に良い微生物を増やして、悪い微生物の割合を減らせば良いのではないかと思い、牛床への散布を始めました。するとまず、匂いに変化が現れ、嫌な匂いがなくなりました。

 そこからは年々乳房炎が減っていき、体細胞数が下がっていきました。散布することにより、良い微生物が増え、悪い微生物が活動しにくい環境へと変化したと考えられます。

 消毒は毎日毎回実践することで効果を発揮しますが、微生物の散布は定着するまでは毎日散布しますが、1週間くらい続ければ、その後は間隔をあけても大丈夫なので、仕事自体も楽になります。

 新規就農で入った農場は経営悪化が続いていた場所なので、病気などに関わる微生物が多くいると考えられる状況でした。
 消毒などをしっかりしても、悪い微生物を農場から完全に排除することは難しいことだと考え、逆に良い微生物を増やすことは簡単にできると考えました。悪い微生物を消毒などによって完全に排除するのではなく、悪さをしない程度に共存することを考え、良い微生物を増やすことにより、悪い微生物の作用を抑えて今の良好な牛舎環境になっています。

牛舎内の匂いはほぼ無く、人も牛も快適な空間になります

微生物を循環させる

 微生物の循環利用も、より定着するためのポイントです。牛→糞尿→スラリー堆肥→畑土→草、そして、その草を牛が食べてまた糞尿に変わり、このサイクルに良い微生物が定着すれば、微生物による「循環型酪農」が完成します。
 このサイクルの本当の完成はまだまだ先ですが、年々良くなっていることが実感できています。

 そのなかでも匂いはハッキリ効果がわかるポイントなので、気になる方は体感しに来てほしいくらいです。

 微生物のチカラは酪農に欠かせないので、皆さんも考えてみて下さい!

微生物資材の一覧

敷料の微生物バランス改善による乳房の健康維持 – らくコネ:酪農業界情報サイト (rakuconne.net)

特殊液体有機肥料 MOOCAL-700 

ラレマンドバイオテック株式会社 イージーベッド プロ | Lallemand Animal Nutrition

株式会社アイデコム https://i-decom.com

株式会社セイワ https://www.seiwa-net.co.jp

PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

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