及川 伸(酪農学園大学 ハードヘルス学教室・教授)
酪農学園大学 ハードヘルス学教室の及川伸教授に「ボディコンディション・スコア(BCS)」の見方について解説いただきました。今回はその後編で「数値を実際の管理にどのように活かすのか?」について解説いただきました。
まずは映像をご覧ください。
BCSのおさらい
BCSは1から5までの数字で、0.25ずつ評価する数値で「肥り具合」を中心に評価できる指標です。
乳牛に主に適用されるのは2.5から4.0までの間で、牛の腰の状態を見たり触ったりして数値を決めます。詳しくは前回の記事で解説していますので、ご覧ください。
BCSの理想的な数値は?
牛群全体のBCSを見るのにはこのようなグラフを用います。
上と下の線の間の範囲に多くの牛が収まっていれば、牛群の栄養コントロールはかなり優秀ということになります。
このグラフでは上限は3.75を示していますが「近年ではそれも高すぎるかもしれない」と及川先生は加えます。
ポイントはBCSの変動幅
このグラフの正常範囲でも、分娩を通じてBCSが下がり、徐々に回復することがわかります。下がってしまうのは仕方のないことですが、この下がり幅を0.75以内に収めることが望ましいです。
及川先生が受け持つハードヘルス学ユニットでは、サポートしている農場のBCS管理をする際、0.5以上の変動が起こったときに農場主に報告しています。
乾乳前期までに肥らせてはいけない理由は
BCS管理のポイントのまとめとして
- 乾乳期のBCSは3.00から3.75の範囲内に収めたい。
- 乾乳期と泌乳初期のBCSの差は0.75程度に留めたい。
- BCSは最低でも2.50で留めるべき。
- 分娩後7週目頃からBCSが回復し、BCSが回復してから次の繁殖も回り出す。
- BCS回復後は3.00から3.50程度でキープしたい。
としています。
乾乳前期で過肥にするべきでないのは、過肥牛は乾乳後期の乾物摂取量が低くなる傾向にあり、満足にエネルギーを蓄えることができないからです。
上のグラフでも、BCS3.00以下の牛が、分娩前ギリギリまで乾物摂取量を確保できていました。一方でBCS4.00以上の牛は早い段階で乾物摂取量を落としています。
牛群の8割程度で適正なBCS管理ができていれば、周産期を満足に乗り越えることができると及川先生は解説してくださいました。しかし、それには当然乾乳期だけでなく、その前から、ひいてはすべての管理がつながってこその管理だと言います。
一番身近で実践しやすいモニタリング方法、改めて取り入れてみてはいかがでしょうか。
PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。