ラレマンドバイオテック株式会社は5月28日、都内で「酸化ストレスセミナー」を開催し、約50名の関係者が参加した。
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 動物生殖生理学ユニット助教の河野光平氏が「酸化ストレスが牛の繁殖性に及ぼす影響」、ラレマンドバイオテック株式会社の今林雅子氏が「高繁殖母豚の酸化ストレス管理による、繁殖成績の改善」、ラレマンドアニマルニュートリション 酵母派生物および抗酸化物質 製品マネージャーのサイビ リサ/Saibi Lisa氏が「抗酸化物質の給与による繁殖と生産成績の改善」「セレン酵母の特徴」を、それぞれ講演した。
●暑熱による酸化ストレスで受胎率低下
河野氏は、乳牛の飼養にかかる1日のコスト(エサ代など)は約1200円(現在はさらに上がっている)だと前置きし、牛が妊娠しなかった場合の損失額を提示して受胎率が非常に重要な指数になると話した。
続けて酸化ストレスについて説明を行なった後、暑さによる酸化ストレス亢進と受胎率の低下について説明。夏の暑さは受胎率を大きく低下させる要因だとし、とくに経産牛は25℃を超えると顕著に体温が高くなり酸化ストレスが亢進する。暑熱ストレスが受胎率の低下につながることは以前から知られており、人工授精のタイミングで体温が高いと受胎しにくいことから暑熱ストレスの時期と胚死滅の関係を調べたところ、発情前後に受けた暑熱ストレスが不受胎につながることがわかった。
最後に、泌乳牛はとくに酸化ストレスが生じやすく、夏季の受胎率の低下には酸化ストレス亢進が関与している。それによって低下した繁殖性の改善には単発的な治療ではなく、抗酸化物質の長期的な給与や投薬が有効である可能性があるとまとめた。
●酸化ストレスに対する戦略を考える
サイビ リサ/Saibi Lisa氏は、活性酸素が過剰に産生されたりバランスが崩れると酸化ストレスが発生すると説明。これは、分子、細胞、生理、農場などさまざまレベルで動物に影響するため、バランスを保つのに抗酸化防御システムが必要になるとした。
酸化ストレスの影響を緩和する方法として、室温のコントロールなどの環境管理、最小限のストレス、遺伝的能力による回復力の高い種牛の選抜、栄養を通じた抗酸化防御システムの構築をあげ、体の自然な防御システムの一環として生産される抗酸化物質と活性酸素が増えすぎるのを防ぎ、二次抗酸化物質は飼料摂取によって補う必要があるとした。
一次抗酸化物質を得ることのできる抗酸化物質として『メロフィード』を紹介。これはメロンジュース濃縮物で、特別なメロン品種の果汁を乾燥させた製品。抗酸化酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を豊富に含んでおり、すべての酸化ストレスと抗酸化防御能の調節を助ける。胃の消化で分解されないように、特許取得のコーティングで腸まで届け、活性部位である下部消化管で分解される。
乳牛など反芻動物への給与試験では、分娩前後の総抗酸化能が高くなり、分娩後、乳の体細胞数も大幅に減少したと説明。加えて、ヤギへの給与試験では、暑熱ストレスによる負荷を加え試験を実施。体温調節面から見ると、『メロフィード』の給与により全身の炎症がなくなり、試験中の平均直腸温度が低下した。
リサ氏は「動物は常に何らかのストレスに晒されており、それに対して一次抗酸化物質を作る必要がある。これはどのような状況においても牛の健康を助けてくれる物質。暑熱については乳牛をはじめとし、肉牛にも共通して効果を実感できる」と『メロフィード』の効果をまとめた。
PROFILE/ 筆者プロフィール
小川諒平Ryohei Ogawa
DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。