
前回は、腐植とCECについてお話ししました。腐植やCECが土の中に部屋を作ることで、成分が出入りできるということ。ただ肥料を入れるだけでは土が痩せて成分が流れてしまう、ということでした。

ピンとこなかった方は、ぜひ前回記事をご覧ください!
今回は、たくさんのメリットを与えてくれる腐植は「一体何のために作られたか?」をお話しします。目に見えない世界には、無駄のない循環とドラマがあるので、楽しんでもらえたら嬉しいです。
腐食は菌のために作られる
結論からお話しすると、腐植は「菌」のために作られます。いや、菌が自分達のために「意志を持って」作っているのです。
菌から見た腐植は大きく分けて二つの役割を持ちます。
1,「貯蔵庫」として。水分、空気、養分を蓄える。
2,「住み家」として。気温変化、物性、水分量から自らを守ります。

どちらも「器」として腐植を作っていることがわかります。菌がたくさん住めるように、増えることができるように、と。
では、皆さんの畑に菌の住み家である腐植を増やすには、どうしたら良いのかを考えていきましょう。菌の住み家ができれば、土が勝手に良くなっていきますからね。
腐食を増やすには
畑の土に腐食を増やすには、
- 環境
- 適した菌
- 原料となるエサ
この三つが必要になります。
- 環境
まずは大前提の環境です。腐植を作るのが菌なら、菌が活躍できる環境が必要です。
僕は初めての方々に勉強会を開くとき、こんな質問をします。
「菌と私達、牛に共通していることは何ですか?」
それは_、皆「生き物」だということです。
菌だけ特別視してしまう傾向がありますが、そんなことはないと思ってください。
では、土壌のpHはどれくらいが良いのでしょう?
私達は「中性」で生きているので、ほとんどの菌は中性域で生きています。化学肥料(の窒素)を散布すると、土壌が酸性化してしまうため、腐植からは遠ざかってしまいます。
- 適した菌
適した菌は、腐植の原料を分解できる菌のことを言います。
種類でいうと、放線菌やバチルス属、シュードモナセス属などがそれに当たります。
彼らは足してあげるとより良いと思いますが、人工的に培養された生菌材は、定着率が落ちるうえに、コストもかかります。彼らは畑にいるので、活躍できる場所を整えてあげるだけで良いと思います。
- 原料となるエサ
ここが一番の「キモ」になるポイント。腐植の原料は、エサとして使いきれない厄介者「リグニン」(草の硬くて消化できない部分と思ってください)なんです。
僕は飼料会社に11年勤務していました。牧草を分析にかけたときには「リグニンがありませんように」そう思っていました。
ですが、リグニンも腐植として生まれ変わり、活躍できるんだ! と、初めて知ったときには感動すら覚えました。
こう考えると、麦稈やオガ粉、バークが混じった堆肥は腐植作りに適していることがわかります。ただし、三つの条件が揃ったときにのみ、腐植を効率的に作ることができることを念頭に置いてください。
つまり、堆肥がどれだけ土に良いのか? ということです。土の中を想像して「この畑は生き物が生きられるか?」と考えながら、土作りをしていきましょう。
PROFILE/ 筆者プロフィール

今村 太一Imamura Taichi
標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。
経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。