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良い草を育てるための良い土と菌の話6:厄介者のシンカ

JOURNAL 2025.06.25

今村 太一

今村 太一Imamura Taichi

 前回は、腐植とCECについてお話ししました。腐植やCECが土の中に部屋を作ることで、成分が出入りできるということ。ただ肥料を入れるだけでは土が痩せて成分が流れてしまう、ということでした。

ピンとこなかった方は、ぜひ前回記事をご覧ください!

 今回は、たくさんのメリットを与えてくれる腐植は「一体何のために作られたか?」をお話しします。目に見えない世界には、無駄のない循環とドラマがあるので、楽しんでもらえたら嬉しいです。

腐食は菌のために作られる

 結論からお話しすると、腐植は「菌」のために作られます。いや、菌が自分達のために「意志を持って」作っているのです。

 菌から見た腐植は大きく分けて二つの役割を持ちます。

1,「貯蔵庫」として。水分、空気、養分を蓄える。
2,「住み家」として。気温変化、物性、水分量から自らを守ります。

 どちらも「器」として腐植を作っていることがわかります。菌がたくさん住めるように、増えることができるように、と。

 では、皆さんの畑に菌の住み家である腐植を増やすには、どうしたら良いのかを考えていきましょう。菌の住み家ができれば、土が勝手に良くなっていきますからね。

腐食を増やすには

畑の土に腐食を増やすには、

  1. 環境
  2. 適した菌
  3. 原料となるエサ

この三つが必要になります。

  1. 環境

 まずは大前提の環境です。腐植を作るのが菌なら、菌が活躍できる環境が必要です。

 僕は初めての方々に勉強会を開くとき、こんな質問をします。
「菌と私達、牛に共通していることは何ですか?」
それは_、皆「生き物」だということです。

 菌だけ特別視してしまう傾向がありますが、そんなことはないと思ってください。

 では、土壌のpHはどれくらいが良いのでしょう?

 私達は「中性」で生きているので、ほとんどの菌は中性域で生きています。化学肥料(の窒素)を散布すると、土壌が酸性化してしまうため、腐植からは遠ざかってしまいます。

  1. 適した菌

 適した菌は、腐植の原料を分解できる菌のことを言います。
 種類でいうと、放線菌やバチルス属、シュードモナセス属などがそれに当たります。

 彼らは足してあげるとより良いと思いますが、人工的に培養された生菌材は、定着率が落ちるうえに、コストもかかります。彼らは畑にいるので、活躍できる場所を整えてあげるだけで良いと思います。

  1. 原料となるエサ

 ここが一番の「キモ」になるポイント。腐植の原料は、エサとして使いきれない厄介者「リグニン」(草の硬くて消化できない部分と思ってください)なんです。

 僕は飼料会社に11年勤務していました。牧草を分析にかけたときには「リグニンがありませんように」そう思っていました。

 ですが、リグニンも腐植として生まれ変わり、活躍できるんだ! と、初めて知ったときには感動すら覚えました。

 こう考えると、麦稈やオガ粉、バークが混じった堆肥は腐植作りに適していることがわかります。ただし、三つの条件が揃ったときにのみ、腐植を効率的に作ることができることを念頭に置いてください。

 つまり、堆肥がどれだけ土に良いのか? ということです。土の中を想像して「この畑は生き物が生きられるか?」と考えながら、土作りをしていきましょう。

PROFILE/ 筆者プロフィール

今村 太一

今村 太一Imamura Taichi

標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。

経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。

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