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水本牧場ブログ18:新規就農時の計画と戦略

JOURNAL 2025.03.04

 私が居抜きで就農した牛舎は、牛床の長さが170cmでした。そして、草地面積は46haでした。

 この二つのことから、多くの草地面積が必要な放牧酪農と、大きな牛体が必要な平均乳量1万2000kgを搾るような酪農は難しいと思いました。

飼う牛の方向性は?

 そこで、170cmの牛床に合い、少ない草地面積でも平均乳量9500kgを搾れるような、飼料効率が良い、中小型の牛達を作ることを目指してスタートしました。

 3産の牛達をピークの大きさだとイメージして、初産はある程度抑えた体型になるように改良・更新しました。

 野球で例えるなら、身長193cmでメジャーリーグのMVP大谷翔平選手ではなく、身長173cmで日本プロ野球のMVP近藤健介選手を目指す感じです。

まずは目標どおりの牛で満床に

 私達夫婦は、哺乳・育成管理に自信があったので、そこで良い牛達を作り、まずは自分達が作った牛達で50頭繋ぎ牛舎をいっぱいにすることを目標にしました。

 ここで最大のポイントは、中小型の牛達を作るからといって、抑えた哺乳や飼料管理をしないで、最大限良い管理をして、「強くて、大きい牛達」を作るということです。
 抑えた管理をして、中小型の牛達を作ろうとすると、「弱くて、細い牛達」か、繁殖が上手くいかなくて月齢を重ねて、「体高が高くて、細い牛達」ができる恐れがあります。

 結局のところ、最大限に良い管理をして、自分達が理想としている体型になるような月齢で、授精・受胎することが重要です。その結果、うちの初産分娩月齢は、現在平均19カ月になっています(ホルだけでなく、ブラウンスイス、クロスブリーディングの牛達も含む)。

引き継いだ牛をそのまま使用することは難しかった

 当初は、離農農家さんの経産牛から産まれてくる牛達の能力が低かったので、思うような牛達を作ることが難しく、初産分娩月齢は平均23カ月でした。

 そこから産まれた未経産牛達に性選別精液を使い、元からいる経産牛達からは後継牛を残さないようにしてからは、牛群の状態が年々良くなり、平均22カ月→21カ月→20カ月と毎年早くなりました。しかも、毎年分娩が早くなっているのに、初産牛達は「強く、大きく」なっていきました。

 4年前ほどからゲノム検査を活用し始め、指数が高い初産は搾乳して確認してから、性選別精液を利用して、後継牛を残しています。

牛が揃った次のステップは

 3年前くらいから、精液の流行りが飼料効率を考えた中小型なので、現在の初産分娩月齢平均19カ月と重なり、初産牛達が以前より小さめになっているので、今後は精液の流行りも考慮し、乳量も上げることを見据えて平均21カ月くらいにしたいと思っています。

就農時に計画できたことが大きい

 就農時にしっかりと計画して戦略的に取り組むことができたので、当初平均6500㎏だった乳量から、10年目での目標であった平均9500㎏まで、早めに達成できました。今の子牛達が初産を迎えるころには、初産平均乳量9500kgが達成できる予定です。

目標設定の仕方は?

目標設定をするには、より具体的な目標設定をすることが重要だと考えています。数字でわかる、大きな目標を建てて、その目標に向かう過程で、道標となる達成しやすい目標をいくつも考えて、その大きな目標に向かっていることを楽しむことができる酪農経営することが、大切だと思います。 

 私は、いつもネガティブな要素に苦悩しながらも、その半面、子牛達の未来と、農場の未来を考えながらワクワクし、楽しんで仕事をしています。

PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

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