Dairy Japan 2024年11月号では、特集「蹄病低減へのチャレンジ」で各地の牧場を取材しました。
北海道では、北広島市の有限会社池田牧場さんにDDの改善と蹄病の管理についてお話をうかがいました。(取材協力=株式会社BRAST)
繁殖改善の一環でDD対策
池田牧場ではかつて、繁殖成績に伸び悩む時期がありました。繁殖検診を担当する株式会社BRASTの牧野康太郎獣医師によると、その一因にDDに罹患している牛が多いことがあげられました。
早速対策を取る池田牧場。はじめに着手したのは蹄浴を定期的に行なうことでした。不定期で行なってはいたものの、週に2回実施するとルールを決め、実施しました。農場管理を行なう大森もみじさんは、「今まで定期的にやらなかったことを、農場のメンバー全員でルーティン作業に組み込むことが大変だった」と振り返ります。
習慣化が難しい
同牧場は従業員が複数作業し、当然決められたとおりに作業を行ないます。この場合に大変なのは、新たな作業やチェックを従業員間で漏らさず実施すること。DD改善のために取り入れる作業やチェックする項目などを、従業員に共有し、従業員が実施してもらって初めて取り組みが成立します。しかし、ときには作業が漏れることもあり、全員が漏れなく作業を実施できるようになるまで、大森さんが全体を見ながら声をかけていきました。それでようやく、農場全体としてDD改善に着手でき、改善傾向に向かっていきました。
栄養面でも少しの変化で効果絶大
蹄の状態を左右するのは外部環境だけでなく、栄養面でも注意が必要です。池田牧場では、TMRミキシングを「ちょっとだけ」見直したことで、蹄の調子がぐんと良くなったことがありました。同牧場では以前、TMRのミキシング時間が長かったことにより、粗飼料が細かくなり過ぎて、ルーメンマットがしっかり形成されていなかったことがありました。細かい粗飼料が、ルーメンを速い速度で通過してしまうためです。そのせいで配合飼料が必要以上に分解・吸収され、蹄に負担がかかっていました。
栄養設計を担当した内田キャトルマネジメントからのアドバイスでミキシング時間だけを短く調整したところ、大幅に蹄の状態が改善。大森さんは「大きな投資をせずとも、ちょっとしたことを見直すだけでよかった」と、日頃の管理の大切さを認識しました。
「牛をかわいがる」という健康管理
現在、池田牧場での蹄管理に一役買っているのが、従業員からの報告による早期発見・早期対処です。同牧場の従業員は牛好きな方が多く、仕事中に牛と触れ合う従業員が多いそう。その過程で、日頃との違いに気づきやすく、小さな異変から大森さんの元に報告が集まると言います。
また牛達が安心して過ごしているため、牛舎内でハンドリングがしやすいことも蹄トラブル防止につながっていました。
蹄管理では、注意深い観察と環境や施設の突発的な異変を極力避けることが、安定した管理につながると、大森さんが教えてくださいました。
PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。