Dairy Japan 2024年10月号では「乳質改善で収益アップ」という特集テーマで取材記事を掲載しました。乳質の悪化は、生産乳量の減少、廃棄乳、治療費の増加を招き、経営に深刻な打撃を与える一方、乳質改善に成功すれば、収益増加へとつながります。今回は、北海道紋別郡の株式会社Ritchfieldの取り組みをご紹介します。
乳質とともに経営が安定
Ritchfieldでは、放牧とフリーストール牛舎を活用し、バルク乳平均体細胞数5万から6万台という高品質を維持しています。この成果にたどり着くまでに、農場を経営する松岡洋平さん・万奈さん夫妻は経営継承後から着々と改善を重ねてきました。
洋平さんが同牧場の経営を継承したのは突然の出来事で、当時、施設の老朽化や人手不足などから牛の病気が増えて治療に追われるなど負のループに陥り、経営に不安を抱えるようになりました。
そこで、とにかく何とかしなければと考えた2人が初めに目標に掲げたのが「乳質を良くする」でした。
データを元に乳房炎管理
乳質を良くするうえで重要なことは、感覚ではなくデータに基づいて対処することだと洋平さんは言います。今までは「搾乳時にブツが出ていた」など、経験や感覚で治療牛や淘汰牛を判断していましたが、体細胞数の高い牛や乳房炎の疑いのある牛に関しては「体細胞リニアスコア」を参照して対象牛を設定するようにしました。体細胞リニアスコアが「3」以上の牛は症状の有無にかかわらず治療、「5」以上の牛は淘汰対象に設定。
また、乳房炎を発見次第、乳汁サンプルを獣医師に提出し、原因菌を特定。それに基づいて効果的な治療法を選択することで、迅速な対応を実現しました。
乳房炎牛の搾乳は通常の搾乳と分け、搾乳後には機器洗浄と手洗いを徹底することで感染拡大を防止しました。
飼料成分のバランス
昼夜放牧+フリ―ストール+ミルキングパーラーという作業体系で経営するRitdhfieldでは、毎日の飼料を微調整することでも乳質のバランスを保っています。そのポイントは、質の良い粗飼料給与が鍵になると洋平さんは言います。
同牧場では放牧を主体としながら、1日2回、牛舎内でTMRを給与します。ここでは、放牧でどれだけ草を食べているかをチェックしながら、日々のTMRの内容を微調整します。夕方のTMR調製の前のタイミングで放牧地に行き、草丈を計測するメジャーを用いて採食量に検討をつけます。放牧地での喰い込み量を反映して、TMRの蛋白給与量を増減します。万奈さんは「MUN10を基準として、蛋白過剰にならないように気をつけている」と言い、それが実際に乳房炎予防に効いていることを実感していました。
ロールで給与する粗飼料も早刈りを意識し、収量よりも採食性(品質)を大事にしています。
基本に忠実に、我流を出し過ぎない
先代から続く同牧場のモットーは「人の口に入る物を生産するのだから、良質でなければならない」というもの。これは松岡さん夫妻だけでなく、従業員やヘルパーなど関わる人達全員が共有しています。
搾乳に関わる作業では、手順や管理体制を統一し、基本手順を忠実に守るように徹底しています。
「搾乳作業者は搾乳前に必ず石鹸で手を洗う」
「乳房炎乳を搾ったら必ず石鹸で手を洗う」
「乳頭を拭くタオルは必ず綺麗なものを使用する」
など衛生意識を全員で保っています。
その結果として同牧場は、毎年、管内の良質乳生産者に選ばれていました。
さらに詳しい内容については『Dairy Japan2024年10月号』をご覧ください。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。