10月になりましたが、当地域(愛知県)はまだまだ暑い日が続いています。この原稿を書いている日は最高気温が30℃を超えました。昼間の仕事は汗をかきます。しかし、朝晩は涼しさを感じるようになってきました。朝は20℃近くまで気温が下がります。気温差が大きい季節がやってまいりました。
そんな時期に頭を悩ませる病気は「肺炎」です。自分自身もさまざまな農場で、たくさんの肺炎と対峙してきました。昔に比べると、飼養環境や栄養管理に対する酪農家さんの意識が高まっているので、肺炎で苦しむことはだいぶ少なくなってきてはいますが(昔は本当に酷かった……)。
子牛での肺炎発生は本当に厄介です。肺炎の原因、皆さんは何を思い浮かべますか?
細菌やウイルス、マイコプラズマ? 飼っている密度? 換気? 栄養? 離乳の方法? 使っている敷料? 敷料を変える頻度? などなどですかね。それらが複雑に絡み合いながら子牛は発熱し、咳をして肺炎まで症状が進み、発見が遅いとグッタリします。
子牛の病気対策を考えるときは、まずは初乳が「きちんと」与えられているかを確認する必要があります。この「きちんと」が意外と難しいです。ここでこれを書き始めると、とても話が長くなるので別の機会に。
栄養濃度が低くても肺炎になります。ミルクが少ない、濃度が低い、などは容易に病気を引き起こします。艶やかな子牛が多い牛群では、あまり病気は見られません。
離乳をしくじると、そのときに肺炎になります。離乳という仕事は本当に奥が深い仕事です。
また、飼養密度が高いと子牛はすぐに肺炎になります。1頭当たり3㎡を切ると増える気がします。暑い地域の酪農家さんでは、夏に受胎しないため分娩の偏りが見られるので、飼養密度がぐっと上がる時期があります(だいたい10月から冬にかけてです)。そうすると「密度高い→牛床がすぐ汚れる現象」が起きて肺炎が発生します。また「密度高い→汚れる→敷料を頻繁に取り換える」という流れも肺炎の原因になります。敷料から舞い上がるホコリは、子牛の呼吸器を傷めつけます。敷料を変えた瞬間、子牛ってはしゃぎますからね。あのホコリは強敵です。
本当に肺炎は悩ましいです。(続く)
写真1 麦稈という素敵な敷料がない当地域は「おが粉」か「もみ殻」が敷料に。これくらいの飼養密度なら、肺炎はあまり起こらないのですけれどね
図1 冬バージョンのTHI、グレーは過去3年の平均。ブルーは昨年から今年にかけてのTHI。急激な変化が起きると肺炎は起こりやすいし、50を切ると肺炎が発生しやすい印象です(最低気温バージョンも作成予定)
PROFILE/ 筆者プロフィール
宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。