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子牛の毛刈り その②

JOURNAL 2024.09.02

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

 台風の襲来が続いております。渥美半島も台風に伴う線状降水帯が発生して、あちこちの道路が冠水しています。気候変動によって、このような経験のない大雨や暑さが増えると思うとうんざりします。地震も怖いです。南海トラフ地震注意の期間は緊張しました。大切な牛にいつもと変わらない生活をしてもらうために、発電機の導入や燃料やエサの備蓄は、これからの酪農経営のなかで欠かせないものになると思います。何年か前の台風による停電で経験しましたが、搾乳できない、水が飲めない牛は狂ったように鳴き叫びます。その声はまだ耳に残っています。

 毛刈りのお話の続きをします。前回は主に体表温度の違いについて書きましたが、大事なのは体温がどれだけ下がったかですよね。

 下表は、毛刈り前の子牛の体温とその後の体温です。39.5℃以上を黄色く表示しています。毛刈り前は39.5℃以上の牛がかなり多く見られましたが、毛刈り後はほとんど見られなくなりました。

 下図はそれをグラフにしたものですが、こうして見ると、やはり毛刈り前後で大きく体温が下がっている様子がわかります。

 ちなみに、上の点線はTHIです。毛刈り前後で、気温や湿度には大きな変化は見られないことから、この体温の低下はやはり毛刈りによるものだと考えられます。

 農家さんから聞いた子牛の良い変化としては、「呼吸がすごく楽になった」「表情が穏やかになった」「ミルクの飲みっぷりが良くなった」などがありました。毛刈りをした子牛達は、その後順調に発育して、毛も秋に向けて少しずつ伸びてきています。もう熱中症対策を意識する時期ではありませんが、来年以降のくそ暑い夏の日、呼吸がはぁはぁしてぐったりしている子牛を見かけたら、そういえば「毛刈りをしてみると良い」って書いてあったなと思い出していただけると幸いです。

PROFILE/ 筆者プロフィール

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。

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