暑い日が続きます。全国でも有数の暑さの愛知県。天気予報で名古屋の最高気温を見てみると人間の体温を上回る気温が続き、猛暑という名前がぴったりです。
そのような厳しい状況では、牛は生きていくだけで精一杯。個人的に繁殖は諦めます。大袈裟ではなく、牛が生きてくれていればそれで良いと思います。
そのような厳しい環境では、子牛もあっという間に熱中症になります。熱中症対策はさまざまな方法がありますよね? 扇風機、水やミストをかける、日よけ(結構大事)、最近では首に巻く保冷剤を着けている子牛もよく見かけるようになりました。そこにさらにお勧めしたいのが、“毛刈り”です。ある農家さんが子牛の毛刈りをしたら、その効果は絶大でした。
さぞかし、毛刈りをした子牛の表面温度は下がってるに違いないと思いまして、クリニックにあるサーモグラフィーを用いて体表温度を測定してみました。すると、予想外に毛刈りをした後の子牛のほうが、サーモグラフィーでは体表温度が高く出てしまいます。毛刈り前は37℃から38℃くらい、毛刈り後は40℃くらいです。
ホルスタインは寒い国で進化した生き物です。寒い国の生き物は生き抜くために体温をなるべく放熱しないように進化したに違いありません。そのため、その被毛は身体の熱を外に逃さないように機能しています。ですから、その2℃の差は、牛が本来の場所で生き抜くために必要な温度差なのではと考えました。
ホルスタインもクソ暑い日本で暮らすことになるとは考えていなかったに違いありません。呼吸が荒い、苦しそう、と思ったら“水をかけつつの毛刈り”を流行らせようと思います。安いバリカンではなく、牛用のバリカンをお勧めします。
けれど、今から秋に向かいますので“刈りすぎ注意”です。風邪ひいちゃいますからね。
写真①:毛刈り前の子牛。毛量がかなり多い
写真②:毛刈り前の体表温度はだいたい37.5℃から38℃
写真③:毛刈りされてスッキリした子牛
写真④:毛刈り後の子牛の体表温度は約40℃
PROFILE/ 筆者プロフィール
宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。