らくちっくラジオの寺内です。
今回は、最近ラジオで取り上げることの多いゲノムとOPUについて、私の見解を簡単にお話しします。昨年には栃木県にて「ゲノムとOPUで酪農経営の常識が変わる」と題したセミナーを開催し、県内外から100名ほどの生産者や関係者にご参加いただきました。
講師にさいとうFARMの斎藤希さんと、株式会社トータルハードマネジメントサービスの獣医師・奥啓輔先生をお招きし、どのように改良してきたのか、何を目指しているのかなど広い視点でお話をいただきました。
牛群の遺伝改良によって得られる恩恵はさまざまありますが、本来はどれも一朝一夕で得られるものではありません。乳量を増やしたい、繁殖成績を上げたい、体型を良くしたいなど理想はあれども、すべてを満たすのは不可能というのがかつての常識でした。
しかし現在は、ゲノム分析によりかなりの確率で成績を予測し、しかも総合指数を用いた精液選択によりバランス良く牛の能力を伸ばし、OPUによって数年で能力的にまったく別の牛群に生まれ変わらせることができる、という革新的な技術が実用化されました。
牛群改良の目指す方向は、ものすごい乳生産量と引き換えに健康に飼うのが難しいスーパーカウではありません。普通に飼養して病気せず、乳量も繁殖も満足のいく成績で長く働き続けてくれる管理しやすい牛を増やし、労働時間を短くすることがゲノムによる牛群改良の一つの着地点だと私は理解しています。これを実現する技術は確立しており、主に北米ではOPU-IVF(経腟採卵−体外受精)による改良は加速していますが、日本国内で実践している方はまだまだ多くありません。
これから数回にわたってゲノム、精液選択と総合指数、OPUについて解説してまいります。次回は昨年から弊社が取り組んでいるOPU技術について紹介します。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
寺内 宏光Hiromitsu Terauchi
北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表