海外の酪農現場を視て学ぶことは、酪農経営にとって良い刺激になり、ときに経営向上に良い影響を与えることもあります。しかしながら、一度に多くの国に視察に行くのは難しいのもまた事実。
そこで、DairyBiz編集部では、複数の国から現地の情報を集め、海外生産現場の実際を紹介していきます。
この記事は2025年1月増刊号(Dairy Biz Vol.1)の一部を抜粋したものです。
戸数は少ないのに生産量は日本の1.3倍
日本の約1/3の人口でありながら、生乳総生産量は日本を大きく上回る959万t(日本は732万7966t)。
カナダの酪農は、広大な土地と自然環境、そして独特の制度や文化に支えられています。
そんなカナダ酪農の全体像から、最新の省力化技術、そして経営スタイルまでを、カナダを拠点に栄養コンサルタントを行っている久富聡子さんが紹介してくれました。
その読みどころの一部をご紹介します!
日本との違いは? 数字で見るカナダ酪農のスケール
2023年のデータによると、カナダの酪農場戸数は9,443戸(日本は1万2,300戸)と日本よりも少ないですが、乳牛頭数は96万9,500頭(日本は83万6,600頭)と、1戸あたりの飼養規模が大きいのが特徴です。
さらに注目すべきは、その生乳の約93%が国内で消費されているという点。人口が日本の約1/3(約4,000万人)であることを考えると、1人当たりの乳製品消費量がいかに大きいかが分かります。経営形態も東西で大きく異なり、
東カナダ(オンタリオ州・ケベック州)
酪農家戸数が多く、繋ぎ牛舎の割合も高い小規模家族経営が主流。
西カナダ(ブリティッシュコロンビア州・アルバータ州)
戸数は少ないものの大型酪農場が多く、フリーストール割合が非常に高い。
といったグラデーションがあります。
厳しさを増す規制と、進む「省力化・自動化」の投資
カナダでは動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点から規制強化が進んでおり、繋ぎ牛舎では2027年までに「牛が1日1回はパドックに出るなど自由に移動できる環境」の整備が求められる見通しです。そのため、今後は繋ぎ牛舎の新設がさらに難しくなると予想されています。
一方で、フリーストール牛舎やロボット導入農場では、次のような最新技術や設備投資が加速しています。
行動センサーの活用
アクティビティモニターによる発情発見や反芻回数のチェックで健康管理を効率化。
省力化システムの導入
自動PMR混合設備、自動給飼機、エサ押しロボット、除糞ロボットにより、1〜2人の作業員で搾乳ロボット2台以上を稼働させるスタイルが定着。


自動換気システム
アルバータ州の新設牛舎などで導入が進む、温度・湿度センサー連動型の自動換気システム。リアルタイムで排気チムニーやエアカーテンを開閉し、空気質を最適化。

「ミルク・クォータ制度」とユニークなコミュニティ
カナダ酪農を語る上で欠かせないのが、1970年代から続く「ミルク・クォータ制度」です。年間単位の生産量枠(クォータ)が乳脂肪kgベースで割り当てられるため、生乳の過剰や不足が起きにくく、安定した乳価(平均乳脂肪約19カナダドル/kgなど)が確保されています。生産者にとっては経営見通しを立てやすい一方、増産にはクォータの追加購入が必要となる仕組みです。
また、文化的な特徴として見逃せないのが、キリスト教の一派である「ハトライト」の存在です。アルバータ州では生乳生産の約3割を彼らの共同体が担っており、集団共同生活の中で世代を超えた持続可能な営農とスムーズな事業継承を実現しています。
誌面ではさらに深掘り!
今回の特集では、ここで紹介した技術や制度のほかにも、
・粗飼料の自給事情や、カナダ独特の蛋白源濃厚飼料「キャノーラミール」
・南米出身の外国人労働者の雇用管理など、家族経営のリアルな実態
・現地取材に基づく最新のホットトピックス
など、日本の次世代酪農のヒントとなる情報が盛りだくさんです。
ぜひ本誌を手に取ってお確かめください!
▼詳しくは「Dairy Biz年1月号 Vol.1」に掲載しています。
▼毎月酪農で役に立つ情報を掲載しています。
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