今さら聞けない質問箱 1:ケトーシスとは?アシドーシスとは?
JOURNAL
Dairy Japan編集部が開設した質問受付コーナー「今さら聞けない質問箱」。
酪農業界で働いていても、実は言葉の意味をちゃんと説明できない、なんとなく分かったふりをしてしまっている――そんな「今さら聞けない」疑問を気軽に寄せてもらう場として始めました。寄せられた質問には、酪農を支えるチーム「FarmEnJine」の大塚優磨獣医師とともに、YouTubeライブで回答しています。
質問はこちらから随時受け付けています。気になることがあれば、どんなことでもお寄せください。
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回答1となる今回は、「ケトーシスとは?」「アシドーシスとは?」という2つの質問に、大塚獣医師と前田がやり取りしながら答えた内容をまとめました。
⚫︎ケトーシスとは
AIに「ケトーシスとは何か、100字以内でまとめて」と聞くと、「ケトーシスはエネルギー不足で脂肪を過剰分解し、血中ケト体が増加する病態」という答えが返ってきます。間違いではないものの、これだけでは実感を持って理解しにくいのが正直なところです。
大塚獣医師によると、ケトーシスはあくまで「病態」であり、ちょうど人間の発熱と同じように原因は1つではないといいます。
1つ目は、分娩前後に多いパターンです。分娩前に肥りすぎていると、分娩後は子宮が大きいぶんルーメンの物理的な容積が減り、思うようにエサが食べられなくなります。足りないエネルギーを補おうと体に蓄えた脂肪を分解して肝臓に送りますが、それでも足りずにケトーシスとなる場合です。

2つ目は、泌乳最盛期に多いパターンです。乳量が非常に多い牛で、食べる量が乳量に見合うだけの栄養を満たせず、体を分解してケトーシスになるケースです。

3つ目は、二次的なトラブルから併発するパターンです。子宮炎など分娩後の炎症が続くと、炎症と戦うために多くのエネルギーが使われ、発熱もあってエサを食べられなくなり、三次的にケトーシスを併発することも少なくありません。

さらに進行すると第四胃変位につながることもあります。
大塚獣医師が関わっているある農場では、年間約460頭のうち25頭がケトーシスになり、そのうち10頭が第四胃変位に進行、さらにその半数の5頭が牛群から除籍される――という、ケトーシスになった牛の20%が除籍されてしまう厳しい状況でした。
しかし、適切な治療・対策に取り組んだ結果、ケトーシスから第四胃変位に進む割合は4%まで低下。治療にかかる期間も、以前は5日~1週間かかっていたものが、2日程度で決着がつくようになったといいます。
大塚獣医師は「ケトーシスは牛乳生産に古くからつきまとう病気ですが、しっかり対策すれば発生も減らせるし、治療成績も大きく改善できる」と話していました。
⚫︎アシドーシスとは
アシドーシスについても、まずAIの回答を聞いてみました。「アシドーシスは主に濃厚飼料の多給によってルーメン内が酸性に傾く病態で、消化不良や低脂率などを招く」という内容です。
大塚獣医師は「間違ってはいないけれど」と前置きしたうえで、実際には濃厚飼料の絶対量よりも、粗飼料とのバランスや、反すうできる環境が整っているかどうかという相対的な問題であることが多いと説明します。同じ量の配合飼料を食べていても、飼料全体の給与量や反すう環境次第でアシドーシスになるかどうかは変わってくるといいます。

ルーメン内で起きるルーメンアシドーシスがさらに進むと、大腸アシドーシスに発展することもあります。ルーメンは壁が厚く、唾液もたくさん入ってくるためpHを戻す能力がある程度ありますが、大腸は壁が薄く、唾液もほとんど入ってこないため、pHが乱れると大きなダメージを受けてしまうそうです。
現場でやっかいなのは、確定診断が難しいという点です。下痢や、消化しきれなかった飼料片が便に混じることはありますが、それだけでアシドーシスと言い切ることはできません。血液検査でもアシドーシスに特有の項目をわざわざ調べることは少なく、牛が重曹をよく舐めているか、乳脂率が下がっていないか、喰い込みが安定しているか等、いくつかの指標を組み合わせて疑っていくことになります。重曹をよく舐めるのはpHを整えたい欲求の表れであり、乳脂率の低下はルーメン内の繊維分解菌が酸に弱く減少し、繊維分解が進まなくなることが背景にあります。

大塚獣医師は、現場での印象的な事例を2つ紹介してくれました。
1つ目は、配合飼料の「配り方」が原因だった農場です。残飼を減らしたいという理由から夜の給飼量を少なめに設定していたところ、朝一番、空腹の状態でトップドレス(追加配合)がまとまって入り、そこにさらにTMRが配られる、というサイクルが繰り返されていました。1日を通してずっとアシドーシス気味だったわけではなく、朝の一気食いによって一時的にpHが急降下していたことが原因でした。給飼のタイミングと作業のしやすさを見直したことで、腹いっぱい食べられるようになり、乳量も伸びたといいます。
2つ目は、アシドーシスを警戒するあまり、でんぷん質飼料の配合割合を、本来27%程度に設定するはずだったところ20%まで下げすぎてしまった事例です。結果としてエネルギー不足になり、繁殖成績や乳量が悪化してしまいました。適正な水準に戻したところ下痢はむしろ減り、その後タンパク質を補充する飼料も加えたことで、乳量・繁殖成績ともに改善したそうです。
大塚獣医師は「アシドーシスが怖いからといって、濃厚飼料を減らせば解決するとは限らない。最初の思い込みが間違っていることも多い」と話していました。
「今さら聞けない質問箱」は今後も続けていく予定です。気になる酪農用語や、聞くに聞けない疑問があれば、ぜひ質問箱までお寄せください。
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今回のやり取りの様子は、YouTubeライブのアーカイブでもご覧いただけます。
ケトーシスって何? DairyJapanの質問箱に回答 2026.9.8
