酪農現場ノート7:牛と経営方針を理解して飼料設計をする

JOURNAL 2026.06.11

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

こんにちは! ついこの間雪が溶けたと思ったら1番草収穫の時期が近づいており(執筆時点)、バタバタと収量調査の準備に追われています。5月病になる暇もなく、6月に突入しそうです。

飼料設計の見直し―スターチが低い背景は?

 さて、この春から、TMRセンターの飼料設計を任せていただくことになり、前設計者から引き継いだこれまでの設計を遡っていました。飼料設計は、設計者によって様々な意図や考えがあるため、他の人の設計を見ることは楽しいですし、勉強になります。

 遡っていく中で、「スターチが低めだな」という感覚がありました。自分の基準にしていた値よりもかなり低く、良く言えば牛に優しい設計、別の言い方をすると、攻めきれていない設計だなと感じました。なぜこのような設計にしていたのか。疑問を解決するために、このセンターで使っている全ての飼料をサンプリングしてみました。

使用している購入飼料(ビタミン類を除く)

サイレージの動き方を予測しながら実践

 この飼料をどう見るか。先輩普及員からの「ルーメンの中での動きをイメージしたら良いよ」というアドバイスの元、これらの飼料を水に浮かせてみました。すると、ある程度浮くものとすぐに沈んでしまうものに分かれることがわかりました。ルーメン内の動きとしてイメージすると、浮きやすいものはルーメンマットにも留まりやすく、すぐ沈むものは、ルーメンの下部の液層に流れ込みやすいものだと理解しました。

 次に、ルーメンマットがあるとどういう動きをするのか。サイレージを使って仮のルーメンマットをビーカーに作り、購入飼料を投入してみました。すると、水に浮きやすい飼料はサイレージに絡みついてルーメンマット内部に留まりましたが、水に沈みやすい飼料はサイレージの間を潜り抜け、すぐにビーカーの底に落ちてしまいました。そして、このセンターで使用している飼料では、ビーカーの底に落ちやすい飼料=ルーメンマットを潜り抜けやすい飼料が多いことがわかりました。

農家さんの考えに合致した設計に

 これらを踏まえて、「アシドーシスへの注意が必要だからスターチを低めにしていた」と推察しました。ルーメンマットを潜り抜けやすく、ルーメン下部の液層に多くの購入飼料(特に穀類)が流れ込んでしまうと、ルーメン内のpHを下げやすく、アシドーシスになりやすい環境を作ってしまいます。そのような危険性があったため、スターチを低めに設計し、問題が起こりにくいようにしていたのではないかと推察しました。

 この推察を踏まえて農家さんの考えを聞いてみると、「もう少し乳量を上げていきたい。澱粉が低いのではと多少感じていた」とのことで、アシドーシス対策の強化・購入飼料の見直しなど意向に合うように調整・相談を進めています。

 今回、引き継いだ飼料設計を読み解く上で購入飼料について考え直し、ルーメン内の動きを前よりイメージしやすくなりました。今回行った実験は素人の実験であったため、この結果が全てとは思えませんが(実際のルーメンの働きはもっと複雑なものでしょうから)、ルーメンの中をのぞいてみると言う疑似体験を通して、より飼料設計が面白くなったと感じています。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

十勝農業改良普及センター十勝南部支所で農業改良普及員として活躍中。
兵庫県神戸市生まれ。酪農に興味を持ち、大学進学を機に北海道へ。大学卒業後、十勝農業改良普及センターに就職。現在は酪農の面白さにはまり、牛漬けの日々を送っている。現場をより良くできる普及員となれるよう奮闘中。

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