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土の状態が左右する「草の硬さ」
「消化しやすい草」について考えてみました。 草の良し悪しは「肥料の適正量」と考えている方が多いように感じます。 ですが、実はこれにも土の状態が関わっています。
まず大前提。 「硬い草と柔らかい草、牛が食べるのはどっち?」
そう聞かれたら、ほとんどの人が「柔らかい草」だと言うと思いますが、これは口当たりだけの話ではなく、繊維の質と糖の観点から見ても違いが見えてきます。
土の状態が悪い場合。 土が悪いと、当然、硬い土になっていきます。すると、根がスムーズに伸びていけません。根が「この土で成長しても安全なのか?」という問いに対して「No」を出してしまうことになります(ちなみに「Yes」だと成長に進み、「No」だと防御に進みます)。
すると……日中にせっかく光合成で溜めた体内の糖を繊維へと変換していくのです。 倒れないように、害虫や病気から身を守るよう硬くなっていきます。甘さが減り、嗜好性も落ちていきます。 つまり、自身が傷ついたり、安心した環境ではない場合に繊維が増えていくのです。

草は傷つけると伸びる? 夜の呼吸
現場で「草をいじめると伸びる」という話を聞いたことがありますが、これは表現としては少し違うようです。「修復するために糖を使ってしまう」ことが生育において見えるということでしょう。
昼と夜で植物はまったく違う役割を果たしています。それは僕達人間とかなり似ています。
昼は光合成をして「糖」の蓄積。土中から窒素やほかの成分を取り込んで溜める。 夜は傷ついたり、修復、明け方には生長する環境を作っているのです。
草を傷つけたり、ダメージを与えると、本来成長に費やす時間と成分(糖や蛋白質など)を修復に使ってしまうのです。さらに、土が悪いと生長ではなく、すべて防御の方向に進んでしまいます。
そして、同じ1番、2番でも質が変わってしまうのも、この理由です。なぜそれが起きるのかを詳しく書いていきます。

同じ繊維量でも柔らかさは違う
ここからは少し専門的なエサのお話です。 今まで「繊維」と一括りにしていましたが、繊維は大きく分けて三つのジャンルに分類できます。
「NDF」「ADF」「リグニン」の三つです。
NDF:主に繊維の総量
ADF:消化しにくい繊維
リグニン:ほぼ消化できない繊維
消化のしやすさで言うと 、リグニン<ADF<NDF
と覚えてもらって大丈夫です(「繊維が多い=悪い」ではないので悪しからず)。
なぜ1番と2番、同じ牧草で差が出るのかというと、これも「夜の呼吸量」が関係します。 原理はまったく同じです。 関連するのは「糖」「気温」「収穫までの時間」です。
1番:収穫まで長い(糖多い)、気温(緩やか)
2番:収穫まで短い(糖少ない)、気温(高い)
気温が高いと一気に生長しますよね。これ、生長速度は速まりますが、質(糖の量)は落ちているのです。生長スピードに対して、糖の量が足りていないことが原因です。 だから2番のほうが繊維の量が少なくても、糖の量が足りず、良くないと感じるのです。

糖の重要性。サイレージや発酵の裏話
糖の量が少ないということは、ラップや刻みのサイレージの発酵品質にも影響します。 発酵を促しているのは主に乳酸菌。そのエサになるのは当然「糖」ですから。 そして、「ただ発酵が進まない」だけではありません。悪くなります。
乳酸菌は糖が少ない環境で、エサがないとき、「有機物の分解」はできません。ただ減っていくだけなのです。すると……pHが下がらなくなります(漬物の酸っぱさは乳酸です)。
pHが高いと「酪酸菌(手を洗っても取れないニオイ)」が有機物の分解を始めて勢力を拡大していきます。どんどん臭くて、栄養価がなくなるサイレージができていくのです。粗飼料分析で「pH」の項目があるのは、どの菌が優位に働くかを確認するためです。

すべての根っこは「土」
話が飛躍しすぎました。 つまり、糖は草にとっても、乳酸菌にとっても、重要な成分だということです。 その根本にあるのが「土」です。 僕が飼料会社に勤めていたとき、草が土から生えていると知りながら何にも取り組めなかったのは、この原理を知らなかったからです。
化学肥料を適量加えるのではなく、光合成を促進させる。そして、なるべく草にダメージを与えないよう、土をふかふかにしておく。こんな当たり前が、世の中では「特別な知識」になっている気がします。一緒に足元から見つめ直していきましょう!
PROFILE/ 筆者プロフィール
今村 太一Imamura Taichi
標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。
経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。




