酪農役立ちコラム

ルミノブログ28:乳脂肪低下は「繊維不足」だけの話ではありません

JOURNAL 2026.02.11

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

わが家の1月の天気。毎日晴れ、以上。1月は、記憶が正しければ一日も雨がなく、曇り空ですら数えるほどしかありませんでした。
 連日、朝日がまぶしく、大学最寄りの六会日大前駅の改札を出ると、遠くに富士山を眺めることができます。関東での生活ももうすぐ1年になりますが、冬の関東は本当に気持ちが良いですね。朝は寒いものの、日中は厚着をして犬の散歩に出ると、うっすら汗ばむくらいの陽気に包まれます。
 薄曇りの空をにらみつつ「明日は雪かきがあるから早起きせねば」と身構えていた札幌の冬しか知らなかった自分にとっては、まさに天気の恵みです。関東の冬を象徴する風物詩は、庭先のミカンと、抜けるような快晴——そんな気がしています。

さて今回は、乳脂率の低下に関係する脂肪酸についてまとめてみましょう。

乳脂肪が下がる要因は?

 乳脂肪低下というと、「繊維が足りない」「ルーメン内がアシドーシスになっている」といった説明をよく耳にします。確かにそれは正しいのですが、「なぜそれで乳脂肪が下がるのか」までは、あまり語られていないように思います。ポイントは、乳脂肪の作られ方にあります。
 牛乳の脂肪の多くは、「脂肪酸」が三つ結びついた形(中性脂肪)として存在します。この脂肪酸は、大きく二つのルートで供給されます。

一つは、乳房の中で新しく作られる脂肪酸です。これはルーメン発酵でできた成分を材料にして合成され、とくに繊維の発酵産物を主な原料とします。これを「デノボ脂肪酸」と呼びます。
 もう一つは、エサ由来の脂肪や体脂肪が、そのまま使われる脂肪酸です。こちらは血液に乗って乳房へ運ばれ、直接材料として利用されます。これを「プレフォーム脂肪酸」と呼びます。
 乳脂率低下は、簡単に言えば、「乳房で新しく脂肪酸を作る(デノボ合成)働きが弱まる状態」と言い換えられます。では、なぜそれが起こるのでしょうか。

低デノボFA(脂肪酸)の裏側にトランス脂肪酸が潜んでいる
*デノボFA:22%以下(分娩後60日以内)、28%以下(61日以降~)
*プレフォームFA:50%以上(分娩後60日以内)、40%以上(61日以降~)

ルーメン微生物の安定度で変わる脂肪酸

エサに含まれる油分の一部は、ルーメンの中で微生物によって変換されます。その途中で、「トランス脂肪酸」と呼ばれる物質が生じます。ここまでは、生理的に普通に起こる現象です。

ルーメンの状態が安定しているときは、比較的問題を起こしにくいタイプのトランス脂肪酸が主に作られます(ここでは便宜的に t11 系とします)。これは体に取り込まれても、乳脂肪の材料(プレフォーム脂肪酸)として利用されます。
 一方で、濃厚飼料が多すぎたり、ルーメンが酸性に傾いたりすると、別のタイプのトランス脂肪酸が増えてきます(t10 系)。このタイプは乳房に取り込まれると、「脂肪を作るのを止めなさい」という強い抑制シグナルとして働きます。いわば、悪玉トランス脂肪酸と言えます。悪玉トランス脂肪酸が増えると、乳房で新しく脂肪酸を合成する働きが弱まり、乳脂率が下がってしまう、これが、現在考えられている乳脂率低下のメカニズムです。
 つまり乳脂率低下は、繊維不足そのものが直接の原因というより、繊維が不足することで反芻が減り、ルーメンがアシドーシス寄りになり、その結果として「悪さをするタイプのトランス脂肪酸」が増えることで生じる現象だと考えられるのです。

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


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