酪農技術情報

実際の蹄角度は45度?

JOURNAL 2024.04.03

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

『Dairy Japan2022年4月号』現場で活かす酪農技術「実際の蹄角度は45度?」より

https://dairyjapan.base.ec/

 酪農における乳牛の護蹄管理は生産性の向上に直結します。多くの酪農家で蹄の健康維持に課題が見られ、とくに蹄角度の適正化が重要です。(公社)日本装削蹄協会(以降、著者)に日本と海外の削蹄法を比較・考察し、解説していただきました。

適切な削蹄が乳牛にとって重要

 不適切かつ不安定な削蹄では、バランスの良い蹄形にならないばかりか牛にとってストレスとなり、生産性が低下するとともに蹄病発生を助長する可能性があります。酪農家の生産性向上ならびに乳牛の長命連産を図るために、適切な護蹄管理技術を確立し、改めて知識を普及する必要があります。

日本式と海外式の削蹄

 削蹄の方法は複数存在し、本稿では日本式削蹄法と海外式削蹄法(ダッチメソッド)を比較しています。日本式削蹄法は少頭数を省スペースで削蹄するのに適しており、従来から日本で発展してきた削蹄法です。乳牛にとって快適かつ蹄病が少ない蹄角度として45~50度を基準としています。一方ダッチメソッドは大型農場などで油圧式の枠場による保定と電動削蹄機を使用し、多頭数を迅速に削蹄することができる方法です。近年はダッチメソッドの応用として理想の蹄角度を50~55度になるよう踵を高くする方法が紹介されています。著者は実際に農場で蹄角度などを測定し、既存のデータと照らし合わせ、より適切な削蹄の基準値を設けるための調査を行ないました。

日本式と海外式の削蹄

 調査は平成30年度から令和2年度にかけて実施され、全国各地のホルスタイン種の乳牛1004頭の蹄角度、蹄の縦径、蹄負面の縦径など、蹄の健康に関連する複数の項目を測定しました。下図にある個所を測定しました。

 詳しい測定方法および統計処理については本稿では割愛します。

飼養形態によって違いがあった

 調査の結果、日本式削蹄法では蹄角度が平均45度、ダッチメソッドでは47~50度の範囲でした。また蹄壁長と蹄踵壁長の比率は2:1が理想的とされていますが、どの方法でも理想の2:1にはならなかったことが判明しました。

 繋ぎ牛舎で飼育されている乳牛は、歩行をほとんど必要とせず起立と伏臥を主とした安定的な負面が必要なため、ほかの飼育環境に比べて蹄角度や蹄冠の高さが低い傾向にありました。

 一方フリーストールとフリーバーンはそこに歩行が加わるために、それに伴う蹄部の成長(発育)があるのではないかと推測されました。測定データの平均値はこのようになりました。

 これらの平均値が、削蹄後の基準の一つになると考えられます。蹄角度の適正化は乳牛の生産性向上と蹄病予防に大きく影響します。日本式とダッチメソッドによる違いを理解し、それぞれの牧場の状況に合わせた削蹄法を選択することが推奨されます。
 さらに詳しい情報は日本装削蹄協会のホームページからご確認いただけます。

https://sosakutei.jrao.ne.jp/

 また、護蹄管理への理解を深めるための書籍として、弊社から以下の書籍が好評発売中です。

『乳牛の護蹄管理~チームワークを発揮して牛も農場も快適に~』

https://dairyjapan.base.ec/items/68350386https://dairyjapan.base.ec/items/68350386

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


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