
らくちっくラジオの寺内です。
今回は、いただいたご質問に回答します。

依頼先の複雑さは、ゲノム検査についてわかりづらい理由の一つになっているかもしれませんね。ゲノム検査の依頼先について3段階に分けてみてみましょう。
①検査機関について(国内か国外か)
②検査サービスについて
③検査の受付について
①検査機関について(国内か国外か)
◆国内について
国内のゲノム検査については詳しくないので、公開されている情報を参照します。
日本のゲノム研究は米国と同じく種雄牛選定のために研究が進められ、現在では雌牛のゲノム検査にも利用できるようになりました。2023年には後代検定雌牛など11万頭の雌牛データが蓄積されているようです。
参考:家畜改良事業団「ゲノム情報を活用した乳用牛・肉用牛の改良」
https://liaj.lin.gr.jp/wp-content/uploads/2024/10/genomic-information-pamphlet.pdf
◆国外について
国外で検査する場合は、基本的に米国のCDCB(The Council on Dairy Cattle Breeding)で検査されます。CDCBには日本、アジアを含めた世界中のゲノム情報が集まっており、2024年12月時点で1000万頭の乳牛の遺伝子情報が蓄積しています。そのうち93%が雌牛で、データ量が圧倒的です。
検査機関として国内・国外どちらを選ぶかは、種雄牛の選び方で決まると考えています。NTP基準で国産精液なら、ゲノム検査も国内が良いでしょう。
輸入精液を使用し、TPIやNM$(ネットメリット:経済指数)など海外の指数を参考にしているなら、CDCBで検査すべきだと思います。カナダの指数:LPIも含め、北米で使用される種雄牛の総合指数の背景データはCDCBなので、揃えるべきでしょう。
②検査サービスについて
◆国内の検査は家畜改良事業団が担っています。
◆国外のゲノム検査サービスは複数あります。私が把握している範囲で、NEOGEN社のIgenity、Zoetis社のクラリファイドプラス、ST Genetics社のVision+、Semex社のElevateがあります。これらすべてがCDCBで検査され、基本的な検査結果はどこで検査しても同じになります。
それぞれ独自の検査項目や、交配プログラム(精液選択)とのワンストップサービスなどで差別化を図っています。
③検査の受付について
受付機関も農業団体、民間企業、個人診療所など多岐にわたります。選択肢は地域によって変わるようです。参考までに受付機関の選び方を以下にまとめました。

ちなみに、当社も検査を受付けておりクラリファイドプラスを採用しています。理由は、データ分析の精度の差は単純にデータ蓄積量の差であるとの考えと、輸入精液を使用することが多いのでCDCBを前提とし、独自の健康指数DWP$を参考にしたかったためです。
どの検査サービスが良いかは農場ごとに異なるので、身近な詳しい方に相談しましょう。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

寺内 宏光Hiromitsu Terauchi
北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表