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A2ミルクの最新研究ー(一社)日本A2ミルク協会

JOURNAL 2025.03.05

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

 (一社)日本A2ミルク協会は2月27日、都内でA2ミルクシンポジウムを開催し、オンラインを含め約80名が参加しました。日本におけるA2ミルクの臨床研究結果やパネル・ディスカッションが行なわれ、認証制度などについて発表されました。

●日本人を対象としたA2ミルクの臨床研究

 基調講演では、福山直人氏(東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科 臨床栄養学研究室・教授)が日本初のA2ミルク臨床研究結果を発表しました。これまでオーストラリア・中国・韓国では実施されていましたが、日本国内のデータがなかったため、日本人の20代24名を対象に試験を実施。アンケート調査や呼気中水素濃度の測定を行いました。
 その結果、A2ミルクを摂取した際に便の形状や回数が安定し、便が緩くなりにくいという有意差が認められました。海外の研究結果と同様の傾向が確認され、日本人においてもA2ミルクが腹部症状の軽減に寄与する可能性が示されました。今後は、対象者の拡大や年齢層を広げた追加研究が必要であると説明ししました。

●A2ミルク市場の可能性と課題

 パネル・ディスカッションでは、A2ミルクの市場性や発展性について議論が交わされました。池村隆広氏(株式会社日本アクセス)は、乳製品市場は出荷量が微減する一方、乳価改定により売上が維持されていると説明しました。しかし、人口減少や酪農家の離農、プラントベース食品の台頭により、牛乳消費の減少が懸念されるとし、そのなかでA2ミルクは牛乳の価値向上に貢献する可能性があると述べました。
 また、同社の阿川明子氏は、消費者調査の結果を発表。牛乳購入時に最も重視されるのは「味・おいしさ・品質」であり、「安全性」が次に続くといいます。A2ミルクの認知度は全体の2割程度にとどまり、そのうち半数がA2ミルクの特性を理解している状況でした。消費者がA2ミルクを選ぶ理由の多くは「お腹の調子を意識しているため」ですが、価格が課題と指摘しました。認知度向上が進み、選択肢が増えることで、新たな需要の創出につながるとしました。

●A2ミルクの信頼性確保と今後の展望

 同協会代表理事の藤井雄一郎氏(北海道富良野市・酪農家)は、「A2ミルクの信頼性確保が重要な課題である」と述べます。βカゼインの検査は家庭では不可能で、味や風味だけでA2ミルクかどうかを判断することも困難であるため、協会では遺伝子検査とデータベース管理を実施し、監査制度を設けることで信頼性を担保する方針を示しました。
 また、西村雅明氏(西村獣医科クリニック)は、A2ミルクの認証制度について言及しました。生産から製造までの監査基準が厳格化されており、農水省・厚労省の高度な品質管理基準を満たす必要があります。これにより、A2ミルクの価値向上だけでなく、一貫した生産体制の確立にもつながるとしました。
 さらに藤井氏は、「A2ミルクの認知度が約2割に達したのは協会の活動による成果だが、さらなる普及が必要」と述べ、今後は消費者向けの勉強会や生産者に向けた認証制度の仕組みなどをレクチャーする機会を設け、A2ミルクの理解促進に努めるとしました。

 シンポジウムでは、守山乳業株式会社が2025年4月発売予定の「MORIYAMA A2北海道のおいしい牛乳」についても紹介し、A2ミルク市場の拡大に向けた取り組みが進んでいることを示しました。

藤井雄一郎代表理事

PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。

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