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データを活用して子牛を健康にー哺乳セミナーin栃木

JOURNAL 2025.03.04

前田朋宏

前田朋宏Tomohiro Maeda

 オリオン機械株式会社と中央オリオン株式会社は2月26日、栃木県で哺乳セミナーin栃木を開催しました。セミナーではファームコンサルティング鹿児島の窪田力氏が「人工哺乳の基本とカーフフィーダー・カーフレールを活用した哺乳のポイント」を講演し、哺乳管理を成功に導くポイントと最新のシステムを紹介しました。

 窪田氏は人工哺乳と自然哺乳でその後の母牛の繁殖能力に大きな違いが出ることを説明し、自然哺乳では子牛の吸乳刺激によって母牛のGnRHが放出されにくくなり、発情回帰が遅れることを指摘しました。このため自然哺乳をすると子宮が回復しても卵巣が動かず繁殖が回らないとして、人工哺乳のほうが繁殖成績が高く、経済合理性が高いことを示しました。

 過去、代用乳の給与量を増やすと子牛の発育が高いことが示されたものの、4L以上給与すると下痢の発症率が高かったですが、高蛋白・低脂肪の強化哺育技術の普及によってこの問題は克服され、現在では高い増体ととくに黒毛和種で付加価値の高い子牛生産が可能になりました。この強化哺育をベースに、自動哺乳システムを上手に活用することで、子牛の増体はより良好になると窪田氏は強調します。

 哺乳には馴致期間が必要で、10日間ほどかけて次第に哺乳量を増やしピーク哺乳量まで馴致する必要があります。ただし、生時体重や個体によって開始哺乳量や馴致期間の調整が必要で、日々のモニタリングが必要になります。そのため、オリオン機械はカーフフィーダーやカーフレール、スターターの自動給飼機、体重計などを用いた哺育育成モニタリングシステム、オリオンカーフステーション(OCS)を提供しています。このシステムでは、自農場に合わせた哺育プログラムを設定して、日々の哺乳量やスターター摂取量、そして体重をモニタリングすることで、不調や疾病の早期発見が可能で、早期の処置によって事故率の低減を図ることが可能だと窪田氏は強調しました。

 カーフフィーダーやカーフレールは人の手による哺乳と異なり、多回哺乳が可能であることがメリットで8割程度の労力削減が可能とされる一方、機械任せで子牛のモニタリングが疎かになるケースも散見されると窪田氏は警鐘を鳴らしました。また日々のデータ蓄積とその解析が哺育・育成で重要であるにもかかわらず、手入力ではそれらの時系列のトレースが難しいとも話し、OCS利用には高いメリットがあると強調しました。

 OCSでは哺乳量や哺乳回数、スターター摂取量、日々の増体を常にモニターできるほか、異常が見られた際にはアラートを発信します。早期の異常発見によって早期処置が可能で、自農場が望む増体曲線に沿った管理に近づきます。窪田氏は、まず自農場の生時体重や日増体量、初回授精時体重などを考慮して育成モデルを構築して、哺乳量やスターター摂取量、離乳プログラムをデザインして問題がある子牛に対して早期処置することで付加価値の高い牛の生産が可能だと話しました。

 カーフフィーダーやカーフレールでは、1日最大8回哺乳のプログラムが可能です、通常は4から5回程度とも述べ、その理由は1回当たりの哺乳量が少ないことによる子牛のストレスにあるとしました。少なくとも1回当たり1L以上になるようプログラムすることが子牛のストレスを与えない哺乳プログラムだと加えました。

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田朋宏

前田朋宏Tomohiro Maeda

Dairy Japan編集部・都内在住。
取材ではいつも「へぇ!」と驚かされることばかり。
業界に入って二十数年。普遍的技術、最新の技術、知恵と工夫、さまざまな側面があるから酪農は楽しい!

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