『Dairy Japan 2024年12月号』では「自給飼料増産でコストダウン」を特集テーマに農場を取材しました。
北海道千歳市に位置する苦楽園亀田牧場では、段階を追った計画的な土壌改良から生産される良質な粗飼料給与体系を確立し、乳牛の健康と生産性を両立しながらも濃厚飼料のコストを削減しており、「草で生乳を搾る」という理念のもと、良質粗飼料生産に取り組んでいます。
良い草は万全な土作りから
苦楽園亀田牧場さんの粗飼料生産は、「収量と品質を最大化するために」を念頭に、徹底して取り組んでいます。その根底となるのは良質な土壌。その土壌を形成するのは堆肥。ここに大きく投資しました。
4棟の堆肥舎にロータリー式の堆肥撹拌機2機を使用し、糞尿に麦稈やおがくず、鶏糞などを混ぜながら発酵を繰り返します。まずは良質な完熟堆肥を作ることに注力しました。
段階を追って作目を替える
最適な草地を形成するためには、堆肥を散布した後すぐには牧草を播種しません。まずは堆肥とライムケーキを投入してからデントコーンを4年間播種します。その後、小麦を2~3年作付けして、ようやく土壌が完成。ここから牧草の播種に切り替えます。
これは土壌の質を均一かつ良質に整えるためで、はじめにデントコーンを作付けするのは、堆肥を大量に投入してもカリ過剰が抑えられるからとのことでした。
さらに、デントコーンから麦に転作する際に、徹底的に雑草を防除します。そして、麦を収穫した後、秋になって牧草を播種することで、雑草が生えづらい環境が完成します。
このように入念な準備を経てできた草地は、収量が高いことはもちろん、雑草も生えづらく、さらに草地更新も低頻度でよくなります。
良い草づくりには適期に刈り取ることが命
苦楽園亀田牧場さんの草地は、ルーサン、オーチャード、クローバ、チモシー、ペレニアルライグラスの混播です。刈り取り回数は、なんと年に4回です。必ず開花前に刈り取ることで、最高品質の粗飼料を確保しています。
亀田さんは「せっかく作るのだから、良いものを作らなければ。刈り遅れた草に価値はない」と明言します。
これには晴れた日に確実に刈り取ることが求められますが、そのための人員体制や周囲の生産者との協力体制を築くことも重要だと言います。
サイレージが変敗しないための取り組み
サイレージは「変敗」が最大の敵。これを防ぐために亀田さんは、定期的なバンカーの補修、詰める前のバンカーの徹底清掃、石灰塗布をして変敗リスクを極力排除しています。
さらに、取り出す際の重機も定期的に清掃し、古いサイレージが混入しないように徹底しています。
地域のために良く差を作り続ける
苦楽園亀田牧場さんが高品質粗飼料生産に注力することで、牧場だけでなく地域にも良い影響が波及しています。近隣の畑作農家とデントコーンの交換作付けをして連作障害に対応したり、良質堆肥を供給したりしながら地域全体の畑の質を高めています。
「せっかく頑張って粗飼料を作ったのだから、確実にお金に換え、地域にも還元していきたい」という亀田さんの熱い思いが、良いエサ、良い牛、良い生乳、良い地域へとつながっています。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。