らくちっくラジオの寺内です。
今回は遺伝改良への投資が上手くいかないパターンについて解説をします。
◆飼養管理が不適切
牛のパフォーマンスは遺伝要素と環境要素のかけ算なので、環境に大きな問題があれば遺伝改良の効果を得ることが難しくなります。
下図は、米国において過去60年間の乳量の変化に対して遺伝改良と飼養管理改善が、それぞれどれほど貢献したかを示しています。両輪で改良していくことが理想で、飼養管理が不適切では遺伝改良の60%のぶんを発揮させることもできません。課題が多い場合は、現在の牛の能力を引き出す改善努力が優先です。遺伝改良は未来への投資ですから、まず牧場が持続可能な経営を行なえていることが前提となります。
◆繁殖管理が著しく悪い
受胎率が悪ければ優秀な精液や受精卵をより多く必要としてしまいます。余裕を持って後継牛を生産できなければ選抜もできません。
繁殖をモニターできていない、定期的な繁殖検診を実施できていない、という状況では改良計画が進みにくくなります。
◆牛群規模とのバランス
遺伝改良は小規模牧場でも取り組むべきですが、思い切ったゲノム検査やハイゲノム受精卵の購入、継続的なOPUにはお金がかかります。そして、投資効果がいくら大きくても、回収前にキャッシュアウトしては意味がありません。経営規模に合わせて、少し厳しめに予算を組みましょう。
◆改良の方向が不適切
年によって重視する形質を変えてしまうと、意図せずそれまで改良した形質が後退する場合があります。そのようなことがないよう、【総合指数】によって「取りこぼしのない改良」が推奨されるようになりました。
総合指数に加えて重視する形質を一つか二つ持っておくことは悪くありませんが、追加の改良形質が多すぎるとやはり方針が立ちません。
ゲノム検査での現状把握と、シンプルで確固たる改良方針を持つことが重要です。
◆すでにハイゲノム
あまり多くないケースですが、ゲノム改良を進めていくと牛群と優れた種雄牛との差が小さくなります。この状態では、授精のみで改良のペースを維持でき、OPUは不要となります。ある意味で目指すべき姿です。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
寺内 宏光Hiromitsu Terauchi
北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表