酪農現場ノート「どうすれば牛舎の中が涼しくなる?」

JOURNAL 2026.08.12

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

こんにちは!北海道にも夏が到来しました。ビアガーデンが楽しみな季節ですが、夜は20℃台前半まで気温が下がってしまうので、少し肌寒い中楽しんでいます。

さて今回は、牛舎内を涼しくする置き型ファンの配置について検討した結果を共有したいと思います。

牛舎内ファンの配置を考える

今年の夏は、日中30℃を超える気温に加えて湿度が高く、牛にとってはストレスが多い状態です。そんな中、担当地域の農家さんから、「置き型ファンを追加で購入したから見て欲しい」とのご相談をいただきました。追加で4台購入し、既存の置き型ファン2台を含めて合計6台ある状態です。その他に、換気扇・送風機・ミストなどの設備は無い牛舎のため、この置き型ファンをいかに効率よい場所に配置できるかが勝負です。

まず、伺った際に置かれていた配置です(図1)。

図1 牛舎のイメージ図(既存の配置)

6台の内、4台のファンを飼槽側の通路に置いている状態でした。牧場主としては、飼槽側に立つとかなり涼しくて良いという感触でした。実際に飼槽側の風速を計ると、ファンに近い場所で風速10m/秒、一番遠い場所でも3~4m/秒の風が確認できました。

ここで、読んでくださっている皆さんに問題です。図1の様な配置の場合、「中央通路」はどのように風が動いていると思いますか?ぜひ一度、風の流れを想像してみてください。

……想像できましたか?

煙を使って確認してみると、図2の通りに流れていました。

図2 牛舎のイメージ図(風の動き)

換気と送風を両立させるファンの配置は

飼槽側は、牛舎の奥に向かって風が流れていましたが、中央通路には風を引っ張る要素がありません。そのため、飼槽側の強い気流に押される形で、中央通路の空気は入口方向へ逆流していました。逆流した空気は入り口側から入ってくる外気とぶつかり、排気されることなく牛舎内をぐるぐる循環するように動いていました。この場合、「風速」としては確保されていますが、牛舎内の汚い空気と綺麗な外気を入れ替える「換気」としては、機能していません。このままだと、牛舎内のCO₂濃度や湿度は上がり続け、牛の体熱放散を鈍らせてしまいます。そのことを牧場主に説明し様々検討した結果、図3のような配置になりました。

 図3 牛舎のイメージ図(変更後)

この配置になると、中央通路の空気も牛舎奥へ流れる変化が見られました。①のファンを置くことで、飼槽側の最大風速は多少低下するものの、今回は、換気を良くすることを優先させました。また、牧場主と牛舎を歩いていても「人間の体感としても涼しいよね」と実感でき、今のところのベストな配置ではと話しています。

 この経験から感じたことは、「風の動きは案外分からない」と言うことです。ファンの向いている方向に風は吹くものだと思いがちですが、意外と横に逃げていたり近くで巻いていたりと、人間の思うほどまっすぐ綺麗には動いていません。だからこそ、煙などを使って風を「見える化」することは、換気改善の大きなヒントになります。

また、局所的な風速を高めること以上に、空気が停滞する「デッドスポット」を減らし、牛舎全体の換気をよくすることの重要性も改めて実感しました

 最後に、後日この牛舎を訪れた際の一枚です。

 牧場主曰く、排気する場所から余計な空気が入らないようにした方が涼しく感じるとのことで、板で塞いでいるそうです。実際に煙を出してみると、空気の逆流が減り排気に風の流れが集中することで、以前よりもスムーズに排気されていました。

この写真のように、農家さんと同じものを見て・試して・考えることで、農家さん自らの動きやアイデアを見られることがこの仕事の醍醐味だなと思います。そのようなアイデア達は、教科書の技術とはひと味違う「地域で生まれた技術」です。普及員としては、そのようなアイデア達にアンテナを張り、地域の技術として広めることが役割のひとつだと強く思います。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

十勝農業改良普及センター十勝南部支所で農業改良普及員として活躍中。
兵庫県神戸市生まれ。酪農に興味を持ち、大学進学を機に北海道へ。大学卒業後、十勝農業改良普及センターに就職。現在は酪農の面白さにはまり、牛漬けの日々を送っている。現場をより良くできる普及員となれるよう奮闘中。

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