【イベント開催報告】スタッフが自ら動く牧場へ——朝霧メイプルファームの仕組みづくりを深掘りしました
JOURNAL
『Dairy Japan』で連載中の「最強のチームの作り方」は、従業員や海外スタッフを雇用する牧場が直面する「スタッフが成長し、主体的に働く牧場になるには」という課題に向き合い続ける、朝霧メイプルファーム(静岡県)の丸山純さんの実践を追う連載です。今回、その深掘り企画として「朝霧メイプルファーム×Dairy Japanオンライン座談会」を開催しました。
これまでの連載内容(第1〜6回)はこちらの記事で特別公開しています。ぜひご覧ください。
らくコネ:Dairy Japan人気連載を特別公開&オンライン座談会開催のお知らせ
「人が育つマニュアル」の考え方
マニュアルの活用において、丸山さんが重視しているのは、スタッフのレベルに応じたマニュアルを用意し、段階ごとに「最低限できるようになると良いこと」を細かく設定しているという点です。新人でも着実に仕事を覚えられる一方で、熟練するほどマニュアルのレベルが上がり、求められる基準も高くなっていく仕組みです。
マニュアルと並列して重要になるのが評価制度です。任せられる仕事を細分化し、「この作業ができるようになったらフェーズ○」というように、到達段階を4段階に分けて設定しています。習熟度、応用度、後輩への指導力など、さまざまな評価基準でスタッフのフェーズを分けています。
丸山さんがマニュアルや評価制度を設計するうえで最も大切にしているのは、「なんのためのマニュアル・評価なのか」という視点です。メイプルファームが判断基準として大切にしている「牛のためになることをする」という考え方のもと、一貫した軸で仕組みを考えることが重要だと話してくれました。
データを全員で共有し、改善につなげる
次に紹介いただいたのは、牧場で毎日活用しているデータの仕組みです。メイプルファームでは、その日の乳量や乳質、採食量などを日々入力すると、10以上の項目でグラフが表示され、直近の動きが一目でわかる仕組みになっています。「今牧場では何が起きているのか」を可視化することで、スタッフ全員が同じ情報をもとに改善を考えられる環境を作っています。
この仕組みを構築するまでには苦労があったといいますが、一度できあがれば良い改善ツールになるという事例を紹介いただきました。そのほかにも、AIを活用したマニュアルの再構築やスタッフ教育の仕組みづくりなど、多数の事例が紹介され、参加者からも多くの質問や現場の課題が共有されました。
イベントでのQ&Aをおさらい
本イベントで質問や現場事例をご共有いただいた皆さま、ありがとうございました。改めて、いただいたご質問への回答をまとめます。アンケートでご質問いただいた方にも、こちらで回答させていただきます。
・残飼はどうやって計っているのでしょうか?
→重さを計量できるバケットで残飼を集め、それを計測して記録しています。
・スタッフの提案に対して、実行の最終判断は丸山さんになるのでしょうか。実行する判断基準はありますか? また、実行前に議論は尽くしているのでしょうか?
→スタッフの意見で実施に至ることが多いです。大前提として「牛のために良い提案かどうか」をスタッフ自身が判断して提案してくれるので、大体はやってみよう、という流れになります。そのうえで、きちんと期日を設けて検証するため、実際にどうなったかまで追うことができます。また、月に1回、提案を検討する機会を設けています。
・個人ごとのゴールの違いで作業の完成度にばらつきが出て、トラブルになることがありました。同じゴールを明確にする難しさを感じています。
→牧場作業の場合、まずは低い目標に統一してゴール設定をすることが多いです。「最低限これだけは達成したい」という基準でゴール設定をしています。
・日本人従業員1人、インドネシア研修生3人を雇っています。今までミーティングをやったことがないのでこれからやってみたいのですが、話すのが得意ではないので、まず何から話し始めたらいいか悩んでいます。
→牧場の成績に直結するデータを題材にすると、皆のイメージが湧きやすくて良いと思います。スタッフのなかに話が好きな人がいれば、その人に進行を任せるのも一つの方法です。
・組織図はどのようになっていますか?
→各作業における主任的な立ち位置の人材がいて、その人をリーダーに仕事が回っています。また、評価制度も重視しており、フェーズの高いスタッフを中心に、仕事の割り振りや教育を進めてもらっています。
・海外スタッフと日本人スタッフに、全く同じ作業をしてもらっていますか? なかなか伝わらないと感じている場合、共感してもらうためにどのようなことをしていますか?
→海外スタッフは最初、単純作業が中心です。意思決定の必要ない業務が多くなります。ただ、成長度合いによって任せる仕事は増えていきます。インドネシアスタッフ用の作業評価シートも用意しています。
・AIの活用方法は独学で考えたのですか?
→ほぼ独学で、自分でいろいろと試しています。AI技術の進歩が早すぎるので、ついていくのに精一杯というのが正直なところです。メイプルファームでは、GoogleのGeminiを使ってマニュアルの体裁を整え、NotebookLMにストックしながら必要な情報を引き出したり、教育用の資料(動画やクイズなど)を作成して活用しています。
・クレドなど、牧場として大切にしたい想いはどのように決めていったのですか?
→主に全スタッフの参加のワークショップを通じて言語化しました。
メイプルファームでは外部のブランディングディレクターを利用しましたが、今の時代AIの活用もありだと思います。重要なポイントは「大切なことはみんなで決める」ことです。
・チームビルディング関連の業務に、週/月で何時間くらい当てていますか?
→非常に難しい質問ですが、牛の飼養管理以外の時間という意味では感覚的には毎日3~4時間は組織運営のために時間を割いています。
Dairy Japanでは、このような読者の皆産がさらに学びを深められ、著者や読者同士で交流がも持てるような企画を続けてまいりますので、またの機会をお楽しみに!
