いよいよ夏がやってきます、暑熱対策が本番を迎えます

JOURNAL 2026.07.02

泉 賢一

泉 賢一Kenichi Izumi

アジサイであふれる鶴岡八幡宮の花手水

初めての梅雨の洗礼、といえばよいのでしょうか。昨年と比べて、今年の梅雨時期はずいぶんとジメジメしているように感じます。毎日のようにパラパラと雨が降り、室内の湿度は80%を超え、洗濯物もなかなか乾きません。そして、時折の豪雨。これは北海道ではなかなか経験しない、ぐずついた日々です。

一方で、色とりどりのアジサイが、愛犬との散歩道を賑わせてくれています。こんもりとした普通のアジサイに加え、ガクアジサイやヤマアジサイの可憐な花も彩りを添えています。桜もゴージャスでしたが、そのあとにアジサイが追いかけてくる。元道産子の私としては、内地の花の移り変わりから目が離せません。

梅雨は暑熱順化の準備期間

さて、梅雨が終わると、いよいよ夏本番です。関東圏の農場を訪れると、ここ最近は、国や自治体による暑熱対策の助成が充実してきていると感じます。事業を活用してソーカーシステムを導入する農場、屋根断熱に取り組む農場、送風機を増設する農場など、いろいろな話を耳にします。

梅雨時期は高湿度が玉にきずですが、気温だけを見ると比較的過ごしやすい日もあります。最高気温が20度台前半で収まるような日が多く、THI、つまり温湿度指数でみても70に届くかどうかというところになります。泌乳牛では一般に、THIが68を超えるあたりから暑熱ストレスの影響が出始めるとされていますので、厳密にいえば牛はすでに暑さを感じ始めているのかもしれません。

ただし、昨今の酷暑を考えると、この程度のTHIはまだ序の口ともいえます。人の熱中症対策でも「暑熱順化」という言葉が注目されていますが、体が暑さに慣れていくには、ある程度の移行期間が必要です。その意味では、しっかりした梅雨があることは、本格的な猛暑に入る前の準備期間として捉えることもできるかもしれません。もちろん、湿度が高いと体熱の放散は難しくなりますので、油断は禁物ですが。

高額な投資がいらない「子牛の毛刈り」

最後に、高額な設備投資を必要としない暑熱対策を一つご紹介します。知り合いの生産者から聞いた、子牛の暑熱ストレス対策です。

その農場では、ここ数年、夏場に体調を崩した子牛が熱中症を併発して死亡する事例が散見されたそうです。そこで、昨年の夏に子牛の毛刈りを試してみたところ、その年は死亡例がみられなかったとのことでした。

近年、暑さに強い牛として「スリック遺伝子」が注目されています。これは、毛が短く薄くなることで熱を逃がしやすくする性質に関係する遺伝子です。牛の毛は一見それほど厚くないように見えるかもしれませんが、やはり熱を蓄える作用があるようです。とくに子牛では、体調不良や下痢による脱水が重なると、暑熱の影響を受けやすくなる可能性があります。ちなみに、天然スリック仕様の私から見ると、妻の豊かな髪をうらやましく眺めつつ、夏は暑いだろうなあとも思っています(笑)。

子牛の毛刈りは、頭数にもよりますが、大掛かりな設備投資を必要としません。もちろん、毛刈りだけですべての暑熱ストレスを防げるわけではありません。日陰、換気、送風、飲水、敷料管理などの基本対策と組み合わせることが大切です。

それでも、夏場の子牛管理でお困りの方は、選択肢の一つとして検討してみる価値はあるかもしれません。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

泉 賢一

泉 賢一Kenichi Izumi

1971年、札幌市のラーメン屋に産まれる。1浪の末、北大に入学。畜産学科で草から畜産物を生産する反芻動物のロマンに魅了される。修士修了後、十勝の酪農家で1年間実習し、酪農学園大学附属農場助手として採用される。ルミノロジー研究室の指導教員として学生教育と研究に取り組むかたわらで、酪農大牛群の栄養管理に携わる。2025年4月、27年間努めた酪農大を退職し、日本大学生物資源科学部に転職する。現在はアグリサイエンス学科畜産学研究室の教授。専門はルーメンを健康にする飼養管理。最近ハマっていることは料理と美しい弁当を作ること。

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