酪農役立ちコラム

酪農現場ノート4:突然の乳量減少の原因は……

JOURNAL 2026.01.27

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

 こんにちは! 最低気温が? 日中でも最高気温が? 氷点下を下回る季節になり、真冬だな? と実感しています。関西に住んでいたころは10℃を下回った段階で「寒い!」と騒いでいましたが、すっかり北海道に染まってきたなと感じています。

乳量が突然落ちた

 正月休み明け、飼料設計を担当しているA牧場へうかがったところ「年の瀬に2kg/頭くらい乳量が突然落ちたんだよね」とのこと。データを見せていただくと、確かに一時的に乳量が低下していました。

 原因は何だったのでしょうか。バンカーが切り替わった? サイレージの乾物? 搾乳頭数が変わった? 群の移動があった? いつもと人が違った? と、いろいろと原因を探ってみましたが、どれも外れているようでした。そのとき、作業を終えた息子さんがふと「そういえば年末に水槽が1台壊れていたから直したよ」と! 

 今回の乳量減少の犯人は、どうやらこいつのようです。

適切な水槽の配置

 水槽のガイドラインとしては、水槽1台に20頭以下が目安と言われています。このA牧場では、搾乳牛60頭のフリーバーン牛舎で3台の水槽が設置してあり、きちんと稼働している状況であればガイドラインの範囲内です。

 しかし、今回のように1台が故障して給水できない状況になると、1台当たり30頭と明らかに足りない状況に陥ってしまいます。水槽が壊れていたときの牛の様子を聞くと、突然糞が柔らかくなり、潜在性ルーメンアシドーシスの傾向が見られたようです。採食直後は、活発なルーメン内発酵とVFAの増加によってルーメン内でのVFA吸収が追いつかず酸性に傾きやすいですが、飲水ができていると、ルーメン内のVFA濃度が薄まるため問題が起きにくくなります。今回は、VFAを薄めるために重要な飲水が足りず、潜在性ルーメンアシドーシス傾向に陥ったと推察します。

 今回はすぐに気がつき対処したため数日で乳量は回復していましたが、水槽が壊れているだけで乳量減少という損失が発生しているとなると、ブラシを片手に掃除がてら水槽を見回ることは、お金を生む重要な仕事なのだなと実感しました。

牛の飲水の重要性

 今回の経験を受けて、「牛の飲む水」について改めて調べてみました。牛の生理から見ると、1日で乳1kg当たり3~4kgの水を飲みます(30kg/日乳量であれば90~120?kg)。乳は約88%が水分であるため、毎日搾乳している泌乳牛にとっては水を制限なく飲めることが乳量に直結します。牛が飲みやすい水槽の構造としては、奥行きが50〜60cm(短いと牛がまっすぐ顔を入れられない)、深さが10~15cm(深過ぎると汚れに気がつきにくい)、幅は1頭当たり8~10cmを確保すると、自然な姿勢で水を飲むことができるとされています。

 「水は牛にとって最も重要な栄養成分」と言われるくらい重要ですから、牛が飲みやすい理想形に近づけることで、生産性の向上に直結します。

水槽を手軽に確保する方法

 一方で私は、「難しいことはいいから簡易でも設置してみたらどうだろう」とも思います。ある程度の投資をして牛舎を新築・改造する場合であれば、理想形に近づけるように設計し、製品も選択するべきだと思います。しかし、「現時点で足りていない水槽の数をすぐに足したい」「夏場の暑熱対策として水槽をすぐに増やしたい」「本当に水だけで乳量が変わるか疑問に思っている」など、緊急性が高い場合や、お試しで設置してみたい場合は、お金をあまりかけずに、簡易の水槽を足せる場所にとりあえず設置してみることも手ではないかと考えます。

ギ酸タンクを利用した簡易水槽(暑熱対策チャレンジガイドブック  in 十勝より)

 冬は凍結してしまうので、パーラー内などで空のタンクを桶替わりにして水を張ったり、水槽を設置したりするのがオススメです。水槽に糞が入る可能性と、水を飲むのに立ち止まるのでパーラー内でする糞が増える可能性はありますが、牛は喜んで飲んでいくと思います。夏場であれば、暑熱対策の一環として、パーラーの帰り通路に簡易の水槽を設置している牧場もあります。

 夏場の暑熱対策としても注目される飲水ですが、牛にとっては通年必要なものですし、冬場は凍結で牛が飲めない状況になるなどのトラブルが発生しやすい季節です。重要な飲み水だからこそ、惜しまずに飲める環境をできるだけ手軽に実現できればと思います。

使用していない鋼製缶で作った水槽(暑熱対策チャレンジガイドブック in 十勝より)

PROFILE/ 筆者プロフィール

住野 麻子

住野 麻子Sumino Asako

十勝農業改良普及センター十勝南部支所で農業改良普及員として活躍中。
兵庫県神戸市生まれ。酪農に興味を持ち、大学進学を機に北海道へ。大学卒業後、十勝農業改良普及センターに就職。現在は酪農の面白さにはまり、牛漬けの日々を送っている。現場をより良くできる普及員となれるよう奮闘中。

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