酪農役立ちコラム

水本牧場ブログ40:寒冷対策としてのビタミン給与 後編

JOURNAL 2025.12.29

『ビタミンEとセレン』→抗酸化と免疫のセット)

 前回に引き続き、私の農場での「ビタミン給与」についての取り組みをご紹介します。私は、ビタミンの中でも「ビタミンE」と「セレン」がとくに重要だと考えています。

 ビタミンEは、細胞膜で活性酸素を喰い止め、セレンは細胞質で活性酸素を分解する酵素の構成成分となります。

 両者は異なる場所で酸化ダメージを防ぐ役割を担い、セレンがビタミンEの消費を節約することで、相乗的に免疫力を高めます。乾乳期、搾乳期の効果についてまとめます。

酸化ストレスの軽減

 分娩前後は、急激な代謝により酸化ストレスが最大になります。なので給与することで、酸化ストレスから免疫細胞を守ります。

周産期病の予防

 これらの結果、搾乳期(分娩直後)に起こりやすい以下の疾病を予防します。

①後産停滞(胎盤停滞)

②乳房炎(体細胞数の抑制・乳質改善)

③子宮内膜炎

寒冷対策としての効果

 寒冷期は体温維持で代謝が上がり、酸化ストレスが増大します。冬に不足しがちなビタミンEとセレンを補うと、このストレスに対抗し免疫力を維持できます。
 過酷な寒さの中でも牛の健康と高い抵抗力を保つために、これら抗酸化物質の給与は不可欠です。

 ビタミンA・D・E・セレンは、乾乳期・搾乳期といった生産ステージにおいて重要な役割を持ちますが、それに加えて「寒冷期」は、ビタミン欠乏の大きなリスク要因が重なる時期です。
 冬場の健康維持と周産期病の予防、そして春先の繁殖成績を良好に保つためには、これらのビタミンを通年以上に意識して給与することが重要だと思います。

給与量事例

 うちでは、推奨量が50gのビタミン製品を使用しています。搾乳牛達には、推奨量の50g(70mlの計量カップにすりきり)を給与していました。

しかし、乾乳牛達は45g(60mlの計量カップにすりきり)と推奨量より少ない給与になっていました。

この機会に、乾乳牛達は50gに変更し、搾乳牛達も10%増の55g(80mlの計量カップにすりきり)に変更することにしました。

 まずは、この給与量を続けて、牛達の体調を観察していきたいと思います。

PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

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