こんにちは、日大の泉です。
日本畜産学会の大会は毎年9月に開催されますが、今年の当番大学は岐阜大学でした。私も参加し、昨年の研究成果を発表してきました。内容は「早刈り牧草サイレージを多給することで飼料コストが下がり、IOFC(乳代から飼料費を差し引いた粗利益)が増える」というものです。こちらの詳細はまたの機会に譲り、今回は聴講したなかで興味深かった発表をご紹介します。
発酵TMRと蛋白質分解の問題
特に印象に残ったのは、広島県の畜産技術センター・広島県酪・全酪連の共同研究です。テーマは「発酵TMR中の蛋白質の分解程度と保存期間中の気温」。
試験結果によると、発酵TMRを高温条件下で長期間保管するとタンパク質が過度に分解され、溶解性タンパク質(SIP)が急増するとのことでした。実際に夏場、発酵TMRを給与する酪農家から「乳中尿素態窒素(MUN)が異常に高い」という相談があり、牛群でMUNが20mg/dlほどまで上昇した事例が報告されていました(通常は10〜15くらい)。

ルーメン内で何が起きているのか
溶解性蛋白質はルーメン内で急速に発酵し、大量のアンモニアを生み出します。アンモニアは微生物の栄養源として不可欠ですが、過剰に発生すると使い切れず、ルーメン壁から吸収されてしまいます。
吸収されたアンモニアは肝臓で尿素に変換され乳中に現れます。これがMUNです。この変換過程ではエネルギーが消費されるため、乳量減や牛体の削痩につながりかねません。さらにアンモニアは毒性を持つため、肝臓への負担も無視できません。
要するに、溶解性蛋白質が多くMUNが高い状況は、牛にも乳生産にも好ましくないのです。
試験結果と対策の方向性
研究チームは原因と対策を探りました。気温30℃の条件下で28日、56日と発酵期間が延びるほど、フレッシュTMR(0日)と比べてSIPが上昇することを確認。また、高温でとくに分解が速い原料の特定も進めていました。
現場からの疑問に研究で応答するアプローチが印象的で、私自身も共感するところが多かったです。
余談ですが、岐阜は酒もうまく、鮎やジビエも堪能でき、学会前後大変充実したものになりました。
研究現場と生産現場をつなぐ、こうした試験報告は今後ますます重要になりそうです。
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