みんなのブログ

水本牧場ブログ24:「3カ月までの管理、10歳まで」Part.6

JOURNAL 2025.06.19

これまでのおさらい、うちの子牛の管理は

 前回の引き続きになりますが、哺育管理において、まず重要なことは、分娩前の母牛と胎子に対して良い管理をして、「元気で強い子牛」が生まれてくることです。そのうえで、適切な初乳給与をすることで、「元気で強い子牛」に「微生物」の働きが加わり、子牛がより健康的なってくるので、哺乳管理、飼料管理が計画どおりに進められ、スムーズに離乳を行なうことができる−−−−。それが私の牧場で実践している哺育の管理です。

初乳給与のポイント

 初乳給与のポイントとして、①出生後は早く、②給与量を多く、とよく聞きますが(もちろん重要なのですが)、そのことに捉われすぎないことが重要だと思っています。あくまでも分娩の状況、子牛の状態に応じて、臨機応変な心構えが大切です。

 よく説明される初乳給与のポイントは、

  1. 出生後、なるべく早い時間での給与
  2. できるだけ多い量の給与と言われることが多いですが、実際の推奨例は、
  1. 初回(生後6時間以内)
    子牛の体重の5から6%(2~3ℓ)
  2. 2回目(生後6から12時間後)
    子牛の体重の2から3%(1から1.5ℓ)

 合計で、

  1. 生後12時間以内に
  2. 子牛の体重の8から10%(3から4ℓ)

 の初乳を給与することが望ましいとされています。ですので「慌てて無理やり」早く多く給与することがないようにし、時間に余裕を持って、少量を数回に分けて給与することで、確実に初乳を「吸収」させると良いと考えています。あくまで、初乳を「吸収」できる給与方法を考えることが大切です。

 「元気で強い子牛」に初乳を給与し、しっかりと「吸収」することで、その後、哺乳管理や飼料管理が計画的に進められると思います。そこに、生菌剤を活用した「微生物」の働きが加わえれば、より効率的に管理がしやすい子牛達になりますね!

ルーメン液移植

 生菌剤以外の《微生物》の活用方法として、【ルーメン液移植】があります。子牛へのルーメン液移植の目的と利点は以下のとおりです。

ルーメン発達の促進

 生まれたばかりの子牛のルーメンは未発達で、固形飼料の消化能力が限られています。ルーメン液移植によって、早期にルーメン微生物を確立させ、ルーメンの発達を促すことが期待できます。早期のルーメン微生物の安定化は、子牛の下痢の予防や軽減に役立ちます。下痢の低減にもつながりますよね。

飼料効率の向上

 健全なルーメン微生物は、飼料の消化吸収を効率的に行ない、子牛の成長を促進します。ルーメン液移植により、離乳後の飼料摂取量の増加や、より良い増体が期待できます。

消化器系の問題への対処

 ルーメン機能が低下した牛に対してルーメン移植を行なうことで、ルーメン機能の回復を促すことが期待されます。

ルーメン液移植は予防につながる?

 ルーメン液移植は、治療、予防などネガティブな要因での使用方法が思い浮かぶと思いますが、私は現状をさらに良くすることを目的とした、ポジティブな改善方法として行なっています。

 それは、良いルーメンを持つ経産牛から採取することで、農場で過ごすうえで必要な「微生物」を、出生後早い段階から獲得できることが最大のメリットになります。

 生後1回だけでなく、3カ月齢くらいまでに2から3回行なうことで、これから成長するうえで必要になる「微生物」が、ルーメンに定着しやすくなると考えます。もちろん、感染症などのリスクがないわけではないので、農場内で良いルーメンを持つ経産牛を選定することが重要になります。

ルーメンスコアの良い牛

 実際に私も、「ルーメン液移植」を行なってから、管理しやすい子牛達に進化したと実感しています。やはり、農場に元からある「微生物」を早い段階で獲得できることが、より良い成長につながります。

「元気で強い子牛」が誕生して初乳を給与・吸収し、さらに「ルーメン液移植」などの「微生物」活用によって、子牛達が未来で活躍することが、より明確に期待できると考えます。

ルミナーを使用しています。

 次回は、飼料管理、離乳の取り組みを紹介します!

PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

RELATED/ 関連記事

記事についてのお問い合わせ

error: クリックできません!