酪農技術情報

自給粗飼料の品質を保つための努力

JOURNAL 2025.03.11

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

『Dairy Japan』2024年12月号p.42「ルポ2」より

以前は購入粗飼料を利用していましたが、現在は高品質を意識した自給粗飼料生産に取り組んでいる、栃木県那須塩原市の菊池牧場。その取り組みのポイントやこだわりを取材しました。

夏草からデントコーン

 代表の菊池浩さんは、自給粗飼料の生産が手間のかかるものと知りながらも、経営に大きなメリット生んでくれると考え、自給飼料生産の挑戦を決意しました。最初はイタリアンライグラスとライ麦を生産し、約10年前からデントコーンの作付けを開始しました。「デントコーンは天候に左右されにくく安定した収穫ができる」との周囲の声を参考にしたと言います。

 初年度の収穫は外部に委託しましたが、2年目以降は圃場機械を導入し、播種や刈り取りのタイミングを周囲に相談し、学びながら自営に移行しました。機械の故障を機に7年前にライ麦の生産をやめ、現在はイタリアンライグラスとデントコーンの2種類を生産しています。

 自給飼料生産を始めてから、飼料コストが削減されただけでなく、品質向上によって牛の健康状態が良くなり、乳量も増加しました。「自給飼料生産が経営のプラスにつながった」と手応えを感じています。

高品質にこだわる

 菊池さんは「自給飼料は、単に大量に生産すれば良いというものではなく、牛の健康を考えた高品質なものを作ることが大切だ」と語ります。そのために、土作り、刈り取り時期、飼料設計など多くの要素に気を配っています。

 土作りでは、堆肥の施肥量を調整し、過剰投入を避けています。堆肥量を増やすことで十分な収量は確保できますが、堆肥の過剰投入は作物に悪影響をもたらすこともあるためです。できが良すぎる圃場には、まったく堆肥を入れない場合もあるといいます。地域の酪農家仲間と土壌の状態を情報交換しながらコントロールしています。

刈り取りにも一工夫

 イタリアンライグラスの刈り取りは5月の連休頃に開始します。時間はかかりますが、細断型ロールベーラを使用し、細かく切断しながらラッピングすることで、牛の選び喰いを抑え、乾物摂取量を増やしています。

 これは以前、菊池さんが削蹄の手伝いをしていた際、切断長の長い飼料が残る農場を見た経験から取り入れた工夫です。これにより残飼が少なく、牛群全体で体調を崩す牛も少ないです。しかし、現在のマンパワーですべての面積を同様に刈り取るのは難しいため、一部はロールにしてカッターで細断し給与しています。

 また、雑草対策として5年前からデントコーン以外でもイタリアンで除草剤を導入しました。その際に試行錯誤したのは除草剤散布のタイミングです。極端に早く散布すると牧草に影響して、十分な収量が確保できませんでした。現在は12月上旬から中旬に散布する方法に辿り着きました。散布のタイミングを調整しながら効果を高めています。

土壌分析でさらなる成長を

 「良い作物を作り、良い生乳を消費者に届けることが使命だ」と語る菊池さん。今後は、現状の人員で高品質な飼料生産の限界を追求し、さらなる成長を目指します。今年からはライ麦の生産を計画し、効率化のため新たな機械も導入しました。

 さらに、飼料設計をサポートする明治飼糧株式会社と連携し、土壌分析を開始しました。成分の過不足を正確に把握することで、堆肥量の調整をより綿密に行ない、これまで以上に高品質な粗飼料を生産していく考えです。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。

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